研究課題
基盤研究(C)
本研究はセロトニントランスポーターの遺伝子多型と学習行動に関わる神経メカニズムを明らかにすることを目標としている。これまでにも哺乳類セロトニントランスポーター遺伝子多型と行動変化との関連が報告されているが、複数の報告間に一致した見解がなくそのメカニズムも明らかにされていない。申請者は、特定セロトニンニューロンと行動変化との関係が明らかな軟体動物を用い、セロトニントランスポーターmRNA上の遺伝子多型と行動変化との関係について解析を進めている。まず脳内で発現するセロトニントランスポーターmRNAの遺伝子配列を解析し、3'UTR上に繰り返し配列構造が存在することを明らかにした。また、複数個体から抽出したRNAサンプルを解析した結果、同配列は個体ごとに16回あるいは24回という二つの繰り返しパターンを示していた。セロトニントランスポーターのUTRを含むmRNA全配列は哺乳類を含めて他の動物種でも報告されておらず、生物学的にも興味深い結果といえる。また、これらの繰り返し配列が結合するタンパク質を同定するために、軟体動物脳で発現する予想アミノ酸配列データベースを構築することを試みた。次世代シーケンサーを用いて全トランスクリプトーム解析を行い、cDNA配列データ、それを基にした予想アミノ酸配列データベースを構築した。現在、遺伝子データベースとして配列登録、データ公開を終えている。さらに、ビオチン標識した繰り返し配列RNAを合成し、脳抽出との混合によりRNA-タンパク質複合体を磁気ビーズによって回収実験を行った。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、セロトニントランスポーターmRNA 3'UTR上の繰り返し配列構造の詳細な解析を終えた。また次世代シーケンサーを使用し、モノアラガイ遺伝子データベース、予想アミノ酸配列データベースの構築に成功した。さらにRNA-タンパク質複合体の回収実験の最適化を終えた。これらの結果により、セロトニントランスポーター繰り返しRNA配列に対する結合タンパク質の同定が可能になった。同RNA配列の大量合成にも成功し、次年度以降の実験を円滑に進める準備が整っている。
今年度の実験でRNA-タンパク質複合体の回収、タンパク質の同定は全て終了しなかったため次年度も引き続き実験を続ける。また、3'UTR上繰り返し配列構造と同配列結合タンパク質が、翻訳効率やRNA寿命に及ぼす影響について培養細胞実験系で検証する。これらの実験に加えて、標識物質のライブイメージングも試みる。
RNA結合タンパク質の抽出、解析に必要な生化学実験の消耗品費として次年度の研究費として計上したい。
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