研究課題/領域番号 |
24570096
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
小島 純一 茨城大学, 理学部, 教授 (00192576)
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キーワード | アシナガバチ類 / 分布 / 東アジア温帯域 / 系統仮説 / 種分化 |
研究概要 |
熱帯起源と言われてきたアシナガバチ類の中で、東アジアの「温帯域」にも分布するのがアシナガバチ属とホソアシナガバチ属であり、両属のアジアに分布する種の系統仮説を構築し、系統仮説を参照して東アジア「温帯域」に分布するアシナガバチ類の分散・種分化の過程を考察することを本研究の目標としている。これら東アジア「温帯域」に分布するアシナガバチ類のうち、温帯環境への適応と温帯域への分散の観点から、ヒマラヤ回廊起源を想起させる分布パターンをもつアシナガバチ属Polistella亜属Polistes mandarinus 種群を主たる研究対象として平成25年度の研究を行った。 韓国における採集調査により、P. mandarinus 種群に位置付けられ、極東ロシア固有とされていたP. diakonoviのコロニー、また日本列島への分散経路を考える上で必要な朝鮮半島産P. snelleniのコロニーを採集した。これによりDNAシークエンス用の新鮮なサンプルのみならず巣構造形質ならびに幼虫形態形質を観察するためのサンプルも得た。また北海道大学総合博物館所蔵のネパール等のヒマラヤ山脈東部で採集された標本の調査に基づき、形態形質については新たに2種のデータを平成24年度に作成したアシナガバチ属ならびにホソアシナガバチ属の東アジア「温帯域」に分布する種とその近縁種の系統関係解析の基礎となるタクサ×形態形質マトリックスにデータを追加した。 DNAシークエンスデータについては、平成24年度中に揃えたデータに基づき暫定的な系統解析を行い、形態形質に基づいて単系統群としたP. mandarinus種群の単系統性が分子データでも支持されることを明らかにした。今年度に新たに採集したサンプルについてDNA抽出、PCRまで行い、シークエンスを外部委託できる準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成虫形態形質のみを用いた系統解析を行い、形質状態の極性(コーディングにおける祖先的・派生的)の再評価を行うことで、成虫形態形質のタクソン×形質マトリックスはほぼ完成させた。また、幼虫形態形質ならびに巣構造形質についても新たに採集した種についてのデータも含めて、タクソン×形質マトリックスを充実させた。 DNAシークエンスデータについては、新たに加えることを予定していた既存のサンプルについてシークエンスを外部委託する準備は整えたが、年度の切り替え時期となったため外部委託そのもは次年度に行うことにした。この点では、当初の計画よりやや遅れている。 韓国にて採集調査を行い、極東ロシア固有とされていたPolistes diakonoviのコロニーを採集することができ、本種についての幼虫形態形質、巣構造形質、ならびにDNAシークエンスデータを得るためのサンプルを得た。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、系統解析の基礎となるタクソン×形質マトリックスを来年度の早い時期に完成させ、形態形質とDNAシークエンスデータに分けて系統関係解析を行い、それぞれのマトリックスに対して得られた分岐図間の整合性を検討する。その上で、全マトリックスを統合して解析を行い、得られた系統仮説に基づいてホソアシナガバチ属、アシナガバチ属それぞれについて東アジア温帯域への分散経路と種分化過程を考察する。あわせて、南方起源とされるPolistella亜属のハチの日本列島への侵入経路ならびに日本列島内での分散経路にも考察を加える予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度後半に予定していた、DNAシークエンスの外部委託の準備が整ったのが年度末になってしまったため、外部委託を次年度に回すことにした。このため、「次年度に使用する予定の研究費」として約7万円が生じた。 当該研究費は、平成26年度のできるだけ早い時期に、予定していたDNAシークエンスの外部委託経費として使用する。平成26年度に請求する研究費は当初の計画通りに使用する。
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