研究課題
基盤研究(C)
福島県双葉層群(後期白亜紀)からすでにサンプリングしている堆積岩の試料を過酸化水素水で処理し、クリーニングした炭化小型化石から、新たな花化石を発見に努めた。その結果、コニアシアン期(後期白亜紀)から、新たな花化石を発見した。この花化石は、直径はわずかに1mm前後であり、数枚の心皮が輪生状に配列しており、その周囲を多くの雄蕊が取り囲んでいる状態である。柱頭が特徴的に反転した。雄蕊は、葯と花糸に分化しており、三溝型花粉をつけていたことにより、真正双子葉類に含まれると推定される。白亜紀の炭化した状態で発見される花化石の内部構造を明らかにすることは容易なことではない。そのために、Advanced Photon Source (APS), Argonne, Chicago の2-BM-Bのビームラインで1800枚のX線透過データを撮影し、2000枚のCT断層像を作成した。さらに、トモグラフィー法により、3次元画像データに再構築した。その結果、APSによって、広視野・高分解能撮影が可能であり、サイズや形状も多様な白亜紀の花化石の構造解明が可能となった。現在、これまで、APSのビームラインによって、広視野・高分解能のX線撮影が可能であり、サイズや形状も多様な白亜紀の花化石の構造解明のために、極めて適している装置であることが明らかにされている。その結果を、大型ワークステーションによって、2000x2000x2000 pixelsの3次元マトリックスデータ化し、3Dレンダリング法に3次元構造の再構築を可能としてきた。その結果、従来は解明できなかった、白亜紀の微小な花や果実の内部の情報を高分解能で明らかにすることができるようになった。これらの研究成果を取りまとめつつ、それぞれの花化石について、研究論文を作成している。
2: おおむね順調に進展している
アメリカの大型加速器(APS)で得られたマイクロCT像を、3次元画像処理装置を改善することによって、これまで以上の高分解能で2000x2000x2000 pixelsの大容量データを3次元画像データとして再構築し、各部分を分離、再結合をすることができるようになった。
1mm前後の白亜紀の花化石のマイクロCT像を大型加速器(APS)を用いてX線撮影し、得られたデータを高い分解能で3次元に再構築できたものから、その花の分類学的位置を探り、花の原始的な状態を引き続き、探っていくことにしている。
この研究プロジェクトのために、引き続き、シカゴの大型加速器(APS)による研究を進めることにしているが、ぜひとも、日本の大型加速器SPring-8が、APSをしのぐ性能に高まることを期待している。白亜紀に出現した初期の被子植物群が、どのような花をつけていたのかを明らかにできるのは、植物化石以外にはない。3次元的構造を保持した状態での花化石が発見できるようになったことは、日本での分野の研究が世界のトップレベルと共に進んでいることを意味している。この分野の研究のさらなる発展のために努力していきたい
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Annals of Botany
巻: 109 ページ: 921-936
Grana
巻: 51 ページ: 84-96
http://env.sc.niigata-u.ac.jp/~masa/