愛媛県東温市のアキチョウジとヤマハッカの交雑集団について遺伝的・形態的構成、種の維持機構を明らかにするために、遺伝子マーカーおよび量的形態形質に基づく集団解析を行った。さらに、栽培株を使用した交配実験を行い交配後隔離の程度について検討を行った。14遺伝子座を用いて、アキチョウジとヤマハッカの典型集団を含む168個体の遺伝子型を決定した。14遺伝子座のうち、連鎖不平衡やHWEからのずれの見られなかった11遺伝子座を使用し、雑種指数の解析を行った。Newhybridを用いた解析の結果、東温の交雑集団は解析を行った79個体のうち、55個体がアキチョウジ、5個体がヤマハッカ、12個体がF2に高い事後確率で割り当てられたが、4個体については、低い事後確率で片側の種もしくは雑種カテゴリーに割り当てられていた。測定を行った12の形態形質はアキチョウジとヤマハッカ間で有意差が認められた。12形質に基づく主成分分析の結果、アキチョウジとヤマハッカは別々のクラスターを形成し、東温の集団はそれぞれのクラスターにまたがってプロットされた。東温集団の分子雑種指数と形態雑種指数には0.63(p<0.001)であり相関が見られた。Newhybridによる解析から得られた推定交雑個体の東温の交雑個体の花粉稔性は78.2であり、この値は両親種(アキチョウジ:97%、ヤマハッカ:95%)に比較して低下していた。アキチョウジとヤマハッカを1個体2花ずつ10個体について人工的に交雑を行った結果、F1個体は得られなかった。東温の集団においてcolony2を使用して近縁関係を推定した結果、F2個体はすべてfull sibに割り当てられた。これらの結果から、アキチョウジとヤマハッカの間には強い生殖的隔離がみられ、F1の形成は非常に希であることが明らかになった。
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