研究実施計画に沿って実績を述べる。 1. 分子系統に基づく体サイズ大型化を伴う多発的な種分化パターンの解明:分子系統推定の精度を上げることが必要と判断されたため、多発的種分化が生じている、岐阜県、三重県、奈良県にてRAD-seq用サンプルの採集を行った。 2. 同所的な小型種と大型種の間の機械的隔離の確認:RAD-seqによる精度の高い系統推定に基づいて実施することとし、今年度は保留とした。 3. 体サイズ大型化要因の解明:寄生バエの影響についてデータ数を増やして解析した。その結果、ハエの雌についてはヤスデとの間に体サイズの有意な相関がみられた(n=10)。ハエの寄生でヤスデは死ぬことから、ハエ雌を通じてハエの寄生はヤスデの体サイズ小型化に影響を与えている可能性がある。ヤスデの体サイズ大型化要因は他に存在すると考えられる。 4. 種分化と体色擬態(追加):当初は体サイズと種分化の関係に着目していたが、研究を進める中で体色擬態と種分化についても興味深い現象が見られることがわかった。研究対象のババヤスデ属ミドリババヤスデ種複合体とアマビコヤスデ属の間で灰色のミュラー型擬態が生じていると考えられる。興味深いのはミドリババヤスデ種複合体の一部の系列が灰色ミュラー型擬態環を抜け出してオレンジに移行していること考えられることである。このオレンジへの移行にはミドリババヤスデ種複合体における多発的種分化が関与している可能性がある。予備調査として、多発的種分化が生じている岐阜県、三重県、奈良県にてアバンダンス調査を行うとともに、ヤスデ類を採集し、体色反射波長計測、体色バターン写真記録を行った。 5. ババヤスデ科全種の分類リスト(追加):研究対象種を含むババヤスデ科全種の分類リストを報告した(Marek et al. 2014)。
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