研究課題/領域番号 |
24570105
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
小北 智之 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (60372835)
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キーワード | 生態ゲノミクス / 行動遺伝学 / 行動生態学 / 繁殖戦略 / 繁殖システム / 性ホルモン / 魚類 |
研究概要 |
動物の繁殖行動は近縁種間・集団間ですら著しい多様性を示すが、多様化のメカニズムを詳細に検討する上でその遺伝基盤の解明は欠かせない。本研究はゲノミックリソースが既に充実しており、繁殖システムの対照的な集団間分化を示す日本産イトヨ類のハリヨをモデル系として、これまでほとんど解明されていない魚類繁殖行動の集団間変異の遺伝基盤に切り込むものである。申請者の先行研究で明らかにされた繁殖行動変異のプロキシとしての性ホルモンシグナリングの集団間変異をターゲットとして、多角的なゲノム科学のアプローチを駆使することによって、同定が難しい自然集団の“行動”遺伝子を同定することを最終的な目的としている。 平成25年度は、F2交雑家系を用いたQTLマッピングによって雄の血中アンドロゲン(11-ケトテストステロンとテストステロン)濃度の集団間変異をもたらす原因遺伝子座の一つの同定に成功した。有意なQTLの95%信用区間内に存在する遺伝子をイトヨゲノムデータベースより探索したところ、BPG軸に含まれる性ステロイド合成酵素遺伝子が存在した。この酵素遺伝子は、比較集団間でアミノ酸変異は認められなかったが、前年度実施したマイクロアレイ解析で有意な集団間変異が認められたものであり、H25年度に実施した定量PCRにおいてもこの結果は支持された。さらに、F1交雑個体を用いたこの遺伝子のアリル特異的発現解析の結果は、検出された発現量変異がcis領域の変異によるものであることを強く示唆した。また、この酵素遺伝子のプロモーター領域の塩基配列解析を行ったところ、集団間でいくつかの有力な変異を見いだした。このような結果をもとに、H26年度に、レポーターアッセイを実施し、このようなcis領域の塩基配列変異が遺伝子発現量へ及ぼす影響を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H25年度の段階で、既に有力な候補遺伝子の検出に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度の段階で、既に有力な候補遺伝子の検出に成功し、当初の計画以上のスピードで研究が進んでいるため、今後、この検証を分子生物学的実験を駆使して実施していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
残金1円では購入できる物品が存在しないため 平成26年度経費と合併して執行を検討する
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