研究課題/領域番号 |
24570109
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
橋本 佳明 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (50254454)
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研究分担者 |
市岡 孝朗 京都大学, 大学院地球環境学堂, 准教授 (40252283)
遠藤 知二 神戸女学院大学, 人間科学部, 教授 (60289030)
兵藤 不二夫 岡山大学, 異分野融合先端研究コア, 助教 (70435535)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ボルネオ島 / タイ国 |
研究概要 |
(研究の目的と計画)1)アリ擬態によって防衛している擬態グモ類の多様性がアリ類の多様性を鋳型として創出されていることを,アリ類の多様性が異なる熱帯湿潤林の地表部と樹冠部,熱帯湿潤林と季節乾燥林で擬態グモ類の多様性構造を比較することで検証すること,2)炭素・窒素安定同位体比(高い栄養段階にいるものほど窒素同位体比が高くなること)分析をおこない,アリ類と擬態クモ類の栄養段階上の位置を特定することで,アリ類多様性を鋳型として創出された擬態グモの多様性増大が生態系の安定化に寄与しているのかを明らかにすることである. (実施内容)本計画に基づき,H24年度は1)9月に熱帯湿潤林(マレーシア国ボルネオ島),3月に熱帯季節乾燥林(タイ国サケラート)でアリ類と擬態クモ,非擬態クモ類等のサンプリングを実施,2)同調査に合わせて,炭素・窒素安定同位体比分析による食物連鎖栄養段階の分析のためのアリ類,擬態クモ,非擬態クモ類,クモ類の餌昆虫,落葉,土壌等のサンプリングも行った. (成果)1)スィーピングによる定量サンプリングとビーティングによるサンプリングを組み合わせることで,アリ擬態クモ70個体をはじめとする標本を採集でき,アリ類とクモ類の多様性解析のための最適なサンプリング方法を確立できた.2)炭素・窒素安定同位体比分析に必要な試料量やサンプル固定方法等を確立することができた.3)計画時の予想通り湿潤林より季節乾燥林ではアリ類の多様性が低く,それに合わせて擬態クモ類の形態,種構成の多様性も低くなることが検証でき,その成果をH25年度台湾で開催される国際クモ類学会で発表することとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画に従って,9月に熱帯湿潤林(マレーシア国ボルネオ島),3月に熱帯季節乾燥林(タイ国サケラート)でアリ類と擬態クモ,非擬態クモ類等のサンプリングと炭素・窒素安定同位体比分析による食物連鎖栄養段階の分析のためのアリ類,擬態クモ,非擬態クモ類,クモ類の餌昆虫,落葉,土壌等のサンプリングを実施できた.ただ,調査が年度後半にしか実施できなかったことと,予想していたよりも多数のアリ擬態クモ等のサンプルが採集できために,予備的な炭素・窒素安定同位体比分析は実施できたが,本年度に全サンプルを処理するのに十分な時間を確保できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
H25年度の研究計画に従って,1)湿潤林(1月),季節乾燥林(8月)に合わせてプランテーション(タイ国ハジャイ等で実施予定)でもアリ類,擬態クモ類,非擬態クモ類のサンプリングと炭素・窒素安定同位体比分析の試料採集を行い,2)アリ類多様性の勾配と擬態クモ類の多様性との相関,食物連鎖長の変化を明らかにする. それらの結果の比較から,仮説1)アリ類の多様性は高いが,雑食性のアリ種が多い環境では,捕食率の高いPoor擬態クモ類の比率が増大することで,食物連鎖が長く複雑になり,生態系の安定化がもたらされている,逆に,仮説2)アリ類の多様性が低く,特定のアリ種に擬態したクモだけが共存する環境では,栄養段階の短縮が生じているかの検証を行い,アリ-擬態クモ共生系における多様性創出機構が生態系の安定に寄与しているかの考察を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
主な研究費の使用内容としては,1)湿潤林(1月),季節乾燥林(8月)とプランテーションでのアリ類,擬態クモ類,非擬態クモ類のサンプリングと炭素・窒素安定同位体比分析の試料採集調査のための旅費使用.2)採集サンプルの整理・同定,画像撮影,体長,形態測定等の作業を研究分担者と作業補助者で実施するためと,3)アリ類,擬態クモ,非擬態クモ類,クモ類の餌昆虫,落葉,土壌等の炭素・窒素安定同位体比分析を分担者(兵藤)が実施するための謝金,消耗費の使用を計画している. さらに,「現在までの達成度」の項目でも記述したように,予想していたよりも多数のアリ擬態クモ等のサンプルが採集できたこととH24年度の採集調査時期が年度後半に実施したことを受けて,作業補助者謝金や炭素・窒素安定同位体比分析のための経費を繰越金として担保し,H25年度の研究計画の円滑な実施を図った.
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