研究課題/領域番号 |
24570112
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
西田 治文 中央大学, 理工学部, 教授 (70156082)
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キーワード | 古植物学 / ゴミ化石 / ゴンドワナ / 南極 / 植生・環境 / 古第三紀 / 白亜紀 / 国際情報交換 チリ |
研究概要 |
平成25年度は、前年度の計画を継続し、a) マゼラン州産後期白亜紀~前期新生代の石灰質団塊、b) コンセプシオン州周辺の後期白亜紀~始新世の石灰質団塊、c) Cocholgueで新たに発見された始新世珪化泥炭、についてそれぞれ保管資料を整理するとともに、ピール法(Joy et al. 1953)による顕微鏡薄片標本を作製した。25年度は新たに、a)からはパタゴニアでは最古となる白亜紀後期のナンキョクブナの葉化石を発見した。さらに予察的な花粉分析によって、6種以上のナンキョクブナ属花粉を見出し、同属が白亜紀には予想以上に多様化していたことが分かった。材料b)については、針葉樹類の解析が進み、現在はオセアニア地域に分布する属も見出している。c)についてはほとんどの資料について基本標本の作成が終わり、その過程で現在はインドネシアのみに分布するマトニア属の鉱化化石を発見した。新生代の鉱化化石としては世界初の発見である。標本作成にあたっては、作業補助員の協力が大きく貢献した。 以上の成果は、平成25年9月にチリのLa Serenaで開かれたラテンアメリカ南極研究会議でRESTOS VEGETALES PERMINERALIZADOS: UNA VENTANA NOVELA AL VEGETACION PASADO(鉱化植物化石:過去の植生へのある窓口)として発表し、同時に研究協力者であるHinojosaと南極ブナ標本について検討した。11月にサンチアゴで開かれた東大フォーラム(旅費別途)でも口頭発表を行い、内容はチリの有力紙El Mercurioに紹介された。国内では第13回日本植物分類学会大会で、新発見のシダについて発表し、3月には、チリの植物化石研究会を、国内研究協力者を中央大に招へいして開催し、産出層準の確認や、同定の確認、珪化泥炭研究の将来性等についての検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年の海外調査によって南極で採集した資料の送付が、現地事情で遅れており、これに関する作業が進展していないが、その他の作業は順調に進展している。コチョルゲの始新世珪化泥炭はマスターピールの作成がほぼ完了し、新たな分類群の発見も続いている。胞子・花粉研究も順調な成果を導いている。 成果発表は国内外で行っており、結果が海外のメディアでも取り上げられたように、良好に評価されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に開催した国際学会の影響による作業の遅れは、順調に回復し、白亜紀後期から新生代前期のチリパタゴニアにおける植物相の解明がさらに進展している。網羅的な標本探査から、平成26年度は個別の分類群についての進化過程や、地域的環境変化の検討など、より具体的な課題の設定と解明に移行しつつある。特に、ナンキョクブナ属の初期進化の解明、珪化泥炭植生の特異性、針葉樹類の多様化とオセアニアとの植物地理学的関連、共生生物群の解明、などを目標とした研究を行う。 研究成果は9月にアルゼンチンで開催される国際古生物学会議IPCや国内学会で発表する。また、英文学会誌への投稿も計画している。 最終年度であるが、資料プレパラートの作成、CTスキャナやレーザー顕微鏡も併用した総合的研究を継続するので、研究手法としてはこれまでの年度と同様である。
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次年度の研究費の使用計画 |
CTスキャナによる観察は、研究室に設置してある機器で十分であったため、予定していた外部業者によるさらに高解像度のCTスキャナ利用が不要になったため。 平成26年度もこれまでの使用計画と同様に、顕微鏡観察用プレパラート作成のための消耗品の購入が必要である。特に新型の大型岩石カッターを研究機関の費用で導入するため、そのダイヤモンドブレード購入などの消耗品費として使用する。
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