研究課題/領域番号 |
24570114
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
藤原 祥子 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (30266895)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 貯蔵多糖 / 光合成産物 / デンプン / グリコーゲン / セミアミロペクチン / 光合成生物 / 紅藻 / 緑藻 |
研究概要 |
光合成生物はその産物をグルカンの形で貯蔵するが、その構造はグリコーゲン、デンプン等のα-グルカン、あるいは、ラミナラン、クリソラミナラン、パラミロン等のβ-グルカン、と多様性に富む。本研究ではその出現機構の解明を目的としている。初年度である今年度は以下の結果を得た。1. デンプン型→グリコーゲン型移行仮説の検証:一次共生植物の中でも大きな多様性を示す原始紅藻(紅色植物)に注目し、Cyanidioschyzon(デンプン型)とCyanidium(グリコーゲン型)を用い、グルカン合成関連酵素群(伸長酵素、枝作り酵素、枝切り酵素)の活性を比較した。伸長酵素の活性を揃えてグルカン代謝関連酵素群の活性染色を行ったところ、枝作り酵素及びイソアミラーゼと思われる枝切り酵素の活性がともに、CyanidioschyzonでCyanidiumよりも高くなっていた。このことから、デンプン型では、イソアミラーゼによる枝揃えが活発に行われることにより特徴的なクラスター構造が形成される可能性が考えられた。枝作り酵素に関しても、Cyanidiumとは基質特異性の異なる酵素が働きデンプン合成の要因となっている可能性も考えられた。今後は、これらの酵素遺伝子のクローニングを行い、酵素の性質を比較して行く予定である。2. ピレノイドデンプンに関する仮説(ピレノイドデンプンは、伸長酵素の一種GBSS により長鎖が作られるようになった藻類において、デンプン構造のflexibility が増すことにより形成されるようになったという仮説)の検証:ピレノイドを持たない緑藻Chloromonasの培養を行い、GBSSを解析するための準備を進めている。3. ハプト植物のβ-グルカン合成酵素:我々が作成した円石藻ESTデータベースから酵母KRE6ホモログを抽出し、酵母、褐藻のものとのアラインメントを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である今年度は、3つのサブテーマで結果が得られ始め、概ね順調に進展していると思われる。特に1. デンプン型→グリコーゲン型移行仮説の検証に関しては、シアノバクテリアではデンプン型の種はグリコーゲン型の種よりも多くの枝切り酵素の遺伝子をもっており、それがデンプン合成の要因になっているのではないかという論文が発表されたが、本研究で用いたデンプン型の紅藻Cyanidioschyzonは枝切り酵素の遺伝子を1個しかもたない。したがって、紅藻ではシアノバクテリアとは異なる要因でデンプン構造が決定されている可能性が考えられ、非常に興味深い。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は、以下の3点である。1. CyanidiumとCyanidioschyzonのイソアミラーゼと枝切り酵素のクローニングを行い、酵素を大腸菌で発現させてその性質を比較する。 Cyanidiumの遺伝子をCyanidioschyzon に導入して、貯蔵多糖がグリコーゲンに変化する可能性があるかどうか検討する。2. Chloromonasからデンプンを抽出し、電気泳動及び活性測定によりGBSSをもつかどうか検討する。3. Pleurochrysis のβ-グルカン合成酵素の精製、クローニング、塩基配列の決定を行い、その由来を推定する。もしくはKRE6ホモログのクローニングを行い、遺伝子産物がβ-グルカン合成に関与していることを証明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品は現有のものが使用可能であるため、研究経費のほとんどは遺伝子工学用試薬、アイソトープ試薬等の試薬や器具等消耗品の購入に充てたい。具体的には以下の用途で用いる消耗品の購入に充てる予定である。 一般試薬・キット類:貯蔵多糖の精製・構造解析、酵素活性の測定、遺伝子クローニング、プラスミド構築、PCR 等に用いる。 アイソトープ試薬:貯蔵多糖合成酵素活性の測定や遺伝子スクリーニング、発現解析等に用いる。 DNA シークエンス用試薬・消耗品:塩基配列の決定に用いる。 器具:培養や貯蔵多糖の精製、酵素活性の測定等に用いる。 その他(論文別刷代等)
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