研究課題/領域番号 |
24570116
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
今市 涼子 日本女子大学, 理学部, 教授 (60112752)
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研究分担者 |
海老原 淳 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, その他 (20435738)
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キーワード | シダ植物 / 配偶体 / 菌根菌 / AM菌 / グロムス門 / 共生 / ハビタット / 着生 |
研究概要 |
現生の維管束植物の80%以上が根にアーバスキュラー菌根菌(AM菌)を共生させていることは広く知られており、シダ植物の胞子体の根もAM菌をもつことがすでに報告されていた。これに対してシダ類配偶体(前葉体)は一般に長さ、幅とも1cmに満たない小形の心臓形で、土壌表面に生育することから、AM菌との共生は無いものと考えられてきた。しかし系統の基部に位置するリュウビンタイとゼンマイの野生配偶体についての我々の研究から、これらがともに90%以上という高い確率でAM菌のグロムス菌類Glomeraceaeを多層の中肋部(クッション)に感染させていることが示され、他のシダ類における菌感染性の研究が必要となった。 本年度(平成25年度)は、昨年度から続いてシダ類の大半を占める薄嚢シダ類の基部分類群であるウラジロ科と木生シダ類ヘゴ目の野生配偶体について菌感染を明らかにした。手法はrbcL遺伝子を用いた採集配偶体のDNAバーコーディング手法により種同定を行った配偶体について、SSU領域をクローニングしてAM菌の種同定を行った。その結果、ウラジロ科のウラジロ58%(7/12個体),コシダ78%(7/9)、ヘゴ目のキジノオシダ94%(30/32)、オオキジノオ82%(44/54)、クロヘゴ82%(26/32)、ヒカゲヘゴ63%(5/8)の菌感染率を示し、リュウビンタイ、ゼンマイに比較すると低いものの、かなり高い確率でクッションに菌をもっていることがわかった。またAM菌類の種類は、Glomeraceaeが多いが、Claroideoglomeraceae(グロムスBグループ)、Acaulosporaceaeなど別の科も感染しており、個体によっては2科以上が同時に感染しているもが存在することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に始めた薄嚢シダ類の基部分類群であるウラジロ科、ヘゴ目配偶体の菌感染性に関する研究を、平成25年度は続けて行いほぼ終了した。25年度も個体数も増やすために補完の採集を行ったが、主には24年度に採集済みの配偶体から抽出・保存していたDNAを用いて配偶体の種同定、組織切片による菌感染の有無、クッションの厚さを解析し、また菌感染があった場合にはDNAによる感染菌類の種同定を進めた。その結果、菌感染率はリュウビンタイ、ゼンマイに比べてやや低いものの58%~90%であること、感染している菌はGlomeraceaeだけでなく、Acaulosporaceaeなど他の科も含まれていることが明らかになった。これについては、25年度の日本植物分類学会熊本大会にて発表し、現在論文を執筆中である。 また25年度は、薄嚢シダ類の大半を占める大きな分類群である広義ウラボシ類についての研究を開始した。日本各地でオシダ科、メシダ科、イノモトソウ科、ウラボシ科などの心臓形配偶体をかなりの数採集することができた。それらの予備的研究から、地上生配偶体では感染率が50%以上であることが多いが、ウラボシ科のノキシノブ、マメヅタなど岩上着生のものは菌感染率が0%であるというデータが得られており、今後の研究を進める上で有益な情報となった。 インドネシアのボゴール植物園のTitien Praptosuwiryo博士との共同研究の準備を始め、チボダス植物園にて予備的な配偶体調査を行い、園内に実験区をもうけ、ヘゴ科Cibotiumの胞子を播種を試みるなど、熱帯における配偶体調査の準備を行う事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として広義ウラボシ類の全科を網羅するため、各科から2種以上の配偶体を入手できるよう採集を補完する。すでに採取し同定ずみの配偶体も含めて、樹脂切片をもちいて菌感染の有無とクッション層の厚さのデータを補完する。また菌感染を行っている場合、AM菌の分子同定も行う。以上から地上生配偶体の菌感染率とクッション層の厚さとの間に相関があるか否か、決着をつける。 インドネシアのチボダス植物園での調査から、着生配偶体の菌感染率が0%であることを確認した上で、配偶体の形態、クッションの厚さ、菌感染率を、シダ類の分子系統樹に最節約配置し、「クッション層の厚さの減少と菌根菌からの独立が相関する」とする作業仮説を検証する。 えられた全情報から、配偶体の形態進化と菌根菌との関係を総括し、配偶体の形態進化過程の全貌を推定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
人件費を多く要したため、物品購入を控えたから。 人件費、旅費(インドネシア)として使用する。
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