研究課題/領域番号 |
24570121
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 株式会社生命誌研究館 |
研究代表者 |
蘇 智慧 株式会社生命誌研究館, その他部局等, 研究員 (40396221)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 多足亜門 / 分子系統 / 進化 / 変態様式 |
研究概要 |
多足類動物は節足動物門の一亜門として分類され、ムカデ綱(5目)、ヤスデ綱(16目)、エダヒゲムシ綱(2目)とコムカデ綱(1目)の4つの綱に分けられている。近年の分子系統解析の結果から、節足動物門における多足亜門の単系統性(単一起源)や各綱の単系統性は支持されているが、綱間と目間の関係はほとんど解明されていない。本研究の目的は、大量の核タンパク遺伝子の配列を用いて、多足類の目間と綱間の系統関係を解明し、多足類の変態様式の進化パターンを明らかにすることである。そのうえ、多足類の変態様式の進化における分子メカニズムの解明に繋げる基盤を確立する。 本年度はムカデ綱の4目、ヤスデ綱の11目、エダヒゲムシ綱の1目2科、コムカデ綱コムカデ目の2科、計19サンプルから3つの核タンパク遺伝子、RNA polymerase II largest subunit (RPB1), RNA polymerase II second largest subunit (RPB2) とDNA polymerase delta catalytic subunit (DPD1) の配列を決定し、最尤法とベイズ推定によって系統解析を行った。その結果、コムカデ綱が多足類動物のもっとも祖先的な系統であることが示唆された。また、目間の関係に関しては、ムカデ綱の4目の関係は明らかになり、ヤスデ綱内の目間の関係はまだ不確定な部分も多く残っているが、一部解明された。これらの系統関係の結果から、多足類の祖先は半増節変態様式であり、4綱の分岐後、ムカデ綱から整形変態様式、ヤスデ綱から真増節変態と完増節変態様式のものが出現したことが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代シーケンサーの納入が遅れたことにより、本年度は手法を変更して、RT-PCR法によるターゲット遺伝子の配列データの取得を行ったが、合計19種の多足類動物から3つの核タンパク遺伝子の配列を得ることができた。「研究実績の概要」に書いたように、これらのデータを用いて系統解析を行った結果、多足類の系統関係において新たな知見を得ることができた。これらの結果から多足類の変態様式の進化パターンについて興味深い示唆が得られた。今後、データを増やして結果の信頼性を高め、研究目的の達成を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究遂行によって、多足亜門の綱間の関係において「コムカデ綱が多足亜門のもっとも祖先的な系統である」興味深い新知見が得られた。しかし、他の3綱間の関係とヤスデ綱内の目間の関係については、まだ不明な点が多い。 今後、次世代シーケンサーを利用してデータ量を増やすことによって、まだ解明できていない綱間と目間の関係を明らかにする。信頼性の高い系統樹を構築したうえ、多足類の変態様式の進化パターンの推定を再度行う。また、発現遺伝子を系統間および発育ステージ間での網羅的比較を行い、多足類の変態様式の進化における分子メカニズム解明の基盤を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は、次世代シーケンサー(当研究機関の新規機器)の納入が予定よりかなり遅れたために、従来の手法(RT-PCR法)を用いて標的遺伝子の配列データの取得を行った。次世代シーケンサーと比べて試薬類が安価なため、研究費の使用が遅れた。初年度中に使用し切れていない研究費は次年度以降に請求する研究費と合わせて使用する予定である。 次年度は、主として次世代シーケンサーを用いて遺伝子の配列データの取得と解析を行う予定で、材料としては本年度の解析結果に基づいて12種を選んで、解析に用いる計画である。1サンプルに必要な試薬類は概算で20万円ほどかかるため、合計240万円ほどになる。材料収集と成果発表の旅費は25万円ほど使用する予定である。
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