研究実績の概要 |
バクテリオファージMuは大腸菌に感染するファージであり、正二十面体の頭殻と、収縮性の尾鞘を持つ。我々はこれまでMuファージの基盤サブユニットgp44やgp45のX線構造解析を行った。今回はMuファージテイルファイバーのgp49, gp52とそれに働くシャペロンgp50, gp51の複合体およびネックサブユニットのgp36の発現及び精製を行い、結晶化を試みた。 Muファージgp49,gp50複合体、gp52,gp51複合体、gp36はいずれも組換え体として精製し、収量はそれぞれ1-5mg/Lであった。精製された試料についてそれぞれ384通りの溶媒条件で結晶化を試みた。その結果、gp49,gp50複合体とgp36について結晶を得ることができ、立体構造を決定した。gp49,gp50複合体の構造から、テイルファイバーgp49はβシートやβへリックスが繰り返してできた構造の繰り返しからなることが明らかとなり、他のファージのテイルファイバーとの比較することができた。また、シャペロンgp50はgp49のC端に結合することがわかった。今後はシャペロンgp50がテイルファイバーgp49の構造形成に働く役割やテイルファイバーgp49が宿主菌体膜の糖鎖をどのように認識するかを明らかにしていくことが重要である。また、ネックサブユニットgp36は他のファージのものと異なり、単体ではリング構造をとらず単量体であったが、その立体構造は他のファージのものとよく似ていた。今後は、gp36がなぜ他のファージと異なりリング構造を形成しないのか、他のサブユニットと結合してどのようにリング構造を形成するのかを明らかにする。なお、本研究ではgp36がgp35と結合することも明らかにすることができたが、複合体は凝集体を形成し、その性質はまだ解析できていないため、複合体の凝集を防ぐ条件の検討が重要であると考えられる。
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