研究課題/領域番号 |
24570125
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
米沢 直人 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80212314)
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研究分担者 |
柳田 光昭 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80365569)
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キーワード | 糖タンパク質 / 受精 / 透明帯 / 小角X線散乱 |
研究概要 |
哺乳類卵子透明帯は,3ないし4種類の糖タンパク質からなる超分子複合体で卵母細胞を包む透明な層である。透明帯は受精の際に精子と種選択的に結合する。少なくともin vitro受精においてこの結合は必須である。また,受精成立後の余分な精子の侵入を防ぐ。ウシとブタでは構成タンパク質ZP3とZP4との複合体形成が精子結合能に必要である。 (目的1)ウシZP3およびZP4の種々の変異タンパク質をバキュロウイルス-Sf9細胞発現系を用いて作製した。ZP3のヒンジ領域にZP4結合部位の少なくとも一ヶ所が存在することを平成24年度までに見出していたため,今回は1残基ずつAlaに変異させることによりZP4結合に関わるアミノ酸残基の同定を試みた。ZP3成熟体はこの変異により分泌されなくなったことからフォールディング異常を引き起こした可能性が考えられた。N末端側サブドメインの場合,アミノ酸変異の分泌への影響はほとんどなく特に芳香族アミノ酸がZP4結合に重要であることが示唆された。ZP4のZPドメインはゲル濾過では単量体であったが濃縮により凝集しやすく,小角X線散乱による構造解析には向いていないことが分かった。 (目的2)ブタ透明帯とブタ精子タンパク質とを化学架橋し,透明帯結合因子の同定を試みた。LC/MSでの同定まで解析を進め,既に報告されている透明帯結合因子を含む多数の膜タンパク質が同定された。しかし,各ステップを見直し特異性を向上させる必要があることがわかった。 (目的3)ZP2のプロセシング部位をエンテロキナーゼ切断配列に置き換えることにより受精に伴う透明帯構造変化の解析を試みた。切断部位を含むN末端領域を作製したが、切断効率が悪く本目的の構造変化の解析には利用できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(目的1)ZP3とZP4の相互作用部位解析については当初の計画以上に進展しており興味深い知見が得られている。一方,精子結合活性と糖鎖との関連性については平成24年度に得られた結果の再現性を確認している段階であり,まだ完成していない。小角X線散乱(放射光共同利用実験課題番号2013G150)によるウシZP4の構造解析を計画に従い実行することができたものの,濃縮時の凝集を防ぐことはできなかった。 (目的2)化学架橋を用いたブタ精子からの透明帯結合因子の同定については,研究分担者によるLC/MS解析まで進めることができたため,今後特異性を向上させることにより成果が得られる目途がついた。 (目的3)ZP2のプロセシング部位をエンテロキナーゼ切断配列に置き換えることにより試験管内でプロセシングを再現することができることがわかった。しかし構造変化解析のためにはより切断効率を上げる必要があることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
(目的1)ZP3/ZP4複合体形成機構については,ZP3のヒンジ領域とZP4との複合体の四次構造解析ならびにZP4側の相互作用部位の同定を進めるとともに,平成25年度までのデータをまとめて論文投稿を目指す。精子結合活性と糖鎖との関連性についてはこれまでのデータの再現性を確認し論文投稿を目指す。 (目的2)化学架橋剤を用いた透明帯結合因子検索を進める。同じ方法論を用いて卵膜結合因子検索も開始する。 (目的3)ZP2プロセシングに伴う構造変化の解析にはエンテロキナーゼは適していない可能性が考えられたため,Tevプロテアーゼなどの切断配列を導入しZP2プロセシングの試験管内切断効率の向上を試みる。
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