研究課題
平成25年度は、Get3:TA タンパク質複合体の、光架橋による安定化を試みた。光架橋性非天然アミノ酸(ベンゾフェニルアラニン; BPA)を TA タンパク質の一種である Sec22pタンパク質に導入して、Get3 との架橋を行うことにした。まず、Get3 と Sec22p との共発現ベクター上の Sec22p 遺伝子に網羅的に UAG 変異を導入して、計23個の変異体遺伝子を用意した。次に、UAG 部位に特異的に非天然アミノ酸を導入するためのベクター pEVOL-BpF と共に、大腸菌 BL21 (DE3) 内で Get3 : Sec22p 複合体を発現させることにより、UAG 変異部位に特異的に非天然アミノ酸の導入されたタンパク質を発現させた。このタンパク質複合体をヒスチジンタグを用いて精製した後、UV 照射によって光架橋を行った。光架橋産物を、CBB 染色とウェスタンブロッティングによって解析を行った。その結果、膜貫通ヘリックス部位のC末端側に変異を導入したものについて、光架橋が見られた。Get1, Get2 の構造解析に関しては、Get1, Get2 の両者を昆虫細胞を用いて発現・精製し、さらにGet1/2 のヘテロ二量体として精製することに成功した。このヘテロ二量体と Get3 を混合し、ゲルろ過クロマトグラフィーにかけたところ、Get1/2/3 複合体をシングルピークとして精製することが出来た。これらの複合体について、結晶化を行ったが、現在までに結晶化には至っておらず、さらなる検討が必要と考えられる。また、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、Kluyveromyces lactis といった生物種から get1, get2 遺伝子をクローニングし、昆虫細胞を用いて発現・精製を行ったが、現在のところ酵母のものより性質の良いものは見つかっていない。
2: おおむね順調に進展している
Get3 : TA 複合体を結晶化するために、Get3 : TA 複合体の安定化がまずは重要であると考えられた。本年度は、非天然アミノ酸の部位特異的導入による光架橋によって、複合体の安定化を試みた結果、膜貫通ヘリックス部位のC末端側に変異を導入したものについて、効果的な光架橋が見られた。また、Get1/2 複合体については、安定なGet1/2 複合体の調整に成功した。さらにこの複合体と、Get3 との3者複合体の調整にも成功した。以上より、上記2つの研究に関して、当初の予定通り進捗してはいるが、最終目的である複合体の結晶化には成功しておらず、②のおおむね順調に進行している状況であると考えている。
本年度は Get3 と TA タンパク質間の光架橋には成功したが、効率としてはまだまだ不十分である。今後、さらに条件を検討して、架橋効率の改善を測るとともに、質量分析解析を行って架橋部位の同定を行いたい。架橋部位が同定されれば、その部位にシステイン残基を導入し、ジスルフィド結合を利用した効率的な架橋が可能となり、結晶化にも十分耐えるだけの複合体の調整が可能になると考えられる。また、本年度は Get1/2 及び Get1/2/3 複合体の安定な調整には成功したが、結晶化には成功していない。この原因として、Get2 の N 末端に存在する140 残基ほどのディスオーダー領域の存在が考えられる。そこで、この領域を除いたコンストラクトの作成や、プロテアーゼ処理による除去を行い、結晶化に適したサンプルの調整と行う。また、膜タンパク質の結晶化では、近年 LCP による成功がめざましい。しかし、モノオレインを用いた LCP ではターゲットとなる膜タンパク質の膜外ドメインが大きくないことが必須である。Get1/2の膜外ドメインは、Get3 との構造解析から、少なくとも50オングストローム以上の長さをもっていることが分かっており、モノオレインによる LCP に適しているとは考えられない。また、Get3 との複合体では、Get3 二量体で 90kDa という大きさを持つため、LCP の適用が難しい。従って、Get1/2 複合体に関しては、膜外ドメインを小さくするコンストラクトの作成を行い、モノオレインを用いた LCP 結晶化を試みる。また Get1/2/3 複合体では、モノオレイン以外の脂質を用いることにより、大きな膜外ドメインに対応した LCP 結晶化を試みる。
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Retrovirology
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Scientific Reports
巻: 3 ページ: 3097
10.1038/srep03097.
http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/srro/SRROLifeSciDivJp2/Welcome.html