最終年度である26年度では、ポリプロリンの一分子力学測定から、ポリプロリンが非常に硬い構造を取ることを確認した。またその力学曲線の解析から、単位長さ辺りの弾性を測定した。またポリプロリンはその構造から、他の分子と相互作用する官能基を持たない分子であり、実際に、一分子力学測定においても、基板やカンチレバー先端部への非特異的吸着は、他の分子に比べて著しく低いことが分かった。これらのことから、ポリプロリンは、これまでの蛍光FRET実験などが示していたように、剛直な構造を取り、他の分子と相互作用を起こさない、特異な機能を持った分子であることが分かった。 また今回の研究では、この分子の金基板への共有結合による固定化に成功した。 本研究では、一分子力学測定を行うために非常に長いポリプロリン鎖を使用したが、短いペプチド鎖でこの固定化を行えば、非特異吸着の防ぐ新しい表面改質の手法としての可能性を持っている。 さらに、側鎖と主鎖で交互にペプチド結合を繰り返す非常に珍しい構造を持った、ポリγグルタミン酸と、通常のポリペプチドであるポリLグルタミン酸について、その一分子力学解析を行った。その結果どちらもミミズ鎖モデルに従った力学曲線を示し、ポリグルタミンの分子鎖は柔らかい構造を持つことが分かった。 ポリγグルタミン酸は、納豆のネバネバの主成分であること、また、泥水の様な汚染された水に溶かすことで、凝集、水質を改善する作用が有ることが知られているが、そのメカニズムや、構造に関しては全く知られていない。本研究成果をさらに調べることで、ポリγグルタミン酸の構造やダイナミクス、そして水質改善のメカニズムを解明できると期待される。
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