研究課題/領域番号 |
24570130
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤橋 雅宏 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10397581)
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キーワード | ODCase / OMPDC / OMPDCase / 基質の歪み / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
ODCase について、構造解析・酵素学的アッセイ・計算機シミュレーションを併用した反応機構の解析を行った。構造解析については、酵素-基質アナログ複合体の構造を8つ精密化し、Protein Data Bankに登録した。解析した複合体構造で、6-methyl-UMPはそのmethyl基がpyrimidine環平面から大きく歪んだ構造をしていた。OMP-methyl-esterやOMP-ethyl-esterは、esterがピリミジン環平面から回転していた。 並行して連携研究者と密に連絡を取りながら、計算機シミュレーションを行った。シミュレーションの結果は、ODCaseの基質であるOMPは、carboxylate基がpyrimidine環から回転し、また、平面から歪んだ状態で結合するという構造解析結果と矛盾しなかった。反応のエネルギー過程を見積もったところ、酵素学的アッセイの結果から導かれるODCaseによるΔΔGの低下を非常に良く再現した。計算結果から導かれる歪みの反応への貢献は10-15%程度であることがわかった。 これらの結果を論文にまとめ、JACS誌に投稿、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ODCaseの反応触媒機構には歪みが関わるという仮説について、昨年度の研究により、その仮説に対する最も大きな反論を取り除いた。続いて本年度の研究により、歪みがどの程度反応に関わるかを計算により求めた。このため、ODCaseについては計画をやや上回るペースで研究が進んでいる。 Cyc2については、結晶化に適した試料が未だ得られておらず、その結果結晶化に未だ成功していない。こちらは計画より遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
ODCaseについては変異体の解析などを行い、歪みがどのように起こるのかを明らかにする。並行して、この酵素が還元剤を用いずにAzido基のAmino基に変換する可能性について、検証するための系を構築する。 Cyc2については、この酵素が枯草菌由来であることを考えて、大腸菌では無く枯草菌の発現系を利用して、結晶化用の試料を作成する計画である。また、別の生物種由来のホモログ酵素も、構造解析対象に含めて研究をすすめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
連携研究者、海外の共同研究者等とのミーティングに要した費用について、先方が旅費の負担を行って下さったなどの理由により、見積もりより大幅に少なく研究を遂行できた。このため、主に旅費に大きな残高が生じている。 今年度は、これまでに進めてきた研究をさらに発展させるとともに、カナダモントリオールで開かれる国際結晶学会での発表を計画している。このような方針で研究費を使用させて頂く計画である。
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