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2013 年度 実施状況報告書

細菌べん毛モーター回転方向制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24570131
研究機関大阪大学

研究代表者

宮田 知子  大阪大学, 生命機能研究科, 特任助教 (30423156)

キーワード単粒子解析 / 電子顕微鏡 / 分子モーター
研究概要

細菌べん毛モーターの回転方向制御機構を明らかにするために、極低温電子顕微鏡による単粒子解析により回転方向の制御に関わるスイッチ複合体(Cリング)の構造解析を行う。特に回転方向変換時の構造変化を可視化するために左回転(CCW)または右回転(CW)に偏った回転を示す変異体のCリング付きフック基部体の高分解能構造解析と、回転反転スイッチであるリン酸化CheY (CheY-p)の結合したCリング付きフック基部体の構造解析を行い、それぞれの構造を比較することによって回転方向変換時の構造変化を可視化することを目的とする。
本年度はこれまでに単粒子解析で決定したCCW型、並びにCW型基部体Cリング構造中のスイッチタンパク質FliGの配置情報を同定するために、回転子FliFとFliGの融合株と各種欠損融合株からの基部体の構造解析を行った。これらの変異体のうちFliF C末端とFliG N末端欠損融合株からの基部体の構造と昨年行ったFliGのN末端に蛍光蛋白質(フルオリン)を結合させた基部体の構造を比較することでCリングのインナーリングがFliGタンパク質の一部からなることが示された。
並行してCheY-p結合型スイッチ複合体の構造解析を行うためにCheY-pと同等に作用することが知られている変異型CheY (D13K、Y106W)のC末端領域に蛍光タンパク質YFPを融合させたタンパク質の発現系の構築、並びに精製方法を確立した。このYFP融合型の変異体CheYを用いて、基部体との複合体をグルタルアルデヒドで固定することによってCheY-p結合型スイッチ複合体の再構成条件の検討を行い、CheY-p結合型スイッチ複合体を得ることができた。現在構造解析に向けて電子顕微鏡像を収集中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

CCW型、並びにCW型基部体Cリング構造の高分解能化のための構造解析は継続して行っているが現在のところ大きな進展はない。スイッチタンパク質FliGの位置を同定するための実験ではFliF-FliG欠損融合型の基部体構造でCリング中のインナーリングが完全に消失したことと昨年構造を決定したFliG-フルオリン融合型の基部体の構造で新たな付加密度がインナーリングのさらに内側に確認できたことからFliGの一部がインナーリングを形成し、そのN末端はインナーリングの内側領域にあることが示唆された。しかし現在の構造ではインナーリングの分解能が低く既存の結晶構造を当てはめるまでには至っていない。
CheY-p結合型スイッチ複合体の再構成に関してはCheY-pと基部体との結合が弱く効率のよい複合体形成条件を決定できなかった。またCheY-Pの分子量も小さいく、複合体に結合する分子数も少ないことから電気泳動等による複合体の再構成確認が難しかった。CheY-p結合型スイッチ複合体検出の効率を上げるために抗体の作成と、変異型CheYに蛍光蛋白質YFPを融合したタンパク質を作成した。YFP融合型の変異体CheY を用いて複合体再構成条件の検討を行ったところ、マイルドな固定化方であるGraFixを試みたがこの方法では複合体は確認されなかった。そこで低濃度のグルタルアルデヒドで予め複合体を固定した後複合体を精製する方法を試したところ基部体を含む画分にYFP由来の蛍光を確認することができた。現在この方法で作成した複合体を用いて電子顕微鏡による画像の収集を開始した。

今後の研究の推進方策

昨年度はCheY-p結合型スイッチ複合体の再構成条件を検討し、再現性の良い再構成条件を決めることができた。今年度はCheY-p結合型スイッチ複合体のデータ収集並びに三次元構造解析を進めていき、CリングへのCheY-pの結合数、CheY-p結合によるCリングの構造変化などについて考察する。この複合体の構造解析がうまく進まない場合は変異体CheY―YFP の代わりにリン酸化CheYと同等に基部体に作用するBeF3-化CheY-YFPを調製し、これを用いて複合体再構成と構造解析を行いCheY-p結合型スイッチ複合体の構造を決定する。
これまで解析を進めてきたCCW型とCW型の三次元構造はさらなる分解能の向上を目指す。今後は解析に溶媒平滑化法を取り入れ構造解析を行い、各スチッチタンパク質の原子構造の当てはめが可能になるようにする。また他のラベル体(FliGのフルオリンラベル体、FliF-FliG各種欠損融合株)に関しては引き続きデータの収集と解析を継続し、基部体上のラベル位置の正確な特定特定を目指し原子構造当てはめの精度を上げる。
得られた3つの状態(CCW型、CW型、CheY-p結合型)のスイッチ複合体の構造に各スイッチサブユニット間の相互作用様式と、単粒子像解析で得られたラベル化基部体の立体構造マッピングの結果に基づき、結晶構造を当てはめスイッチ複合体の疑似原子モデルを構築する。CheY-p結合型、CCWまたはCW型変異体それぞれのCリング構造を比較し、モーター回転制御機構のモデルを構築する。

次年度の研究費の使用計画

本年度はCheY-p結合型スイッチ複合体の再構成条件の検討に時間がかかりデータ収集まで到達できなかった。そのため極低温顕微鏡で観察するための試料凍結用のエタンガスや電顕観察用グリッドの購入が予定より少なかったため該当金額に誤差が生じた。
本年度にCheY-p結合型スイッチ複合体の再構成条件はほぼ確定出来たため来年度はCheY-p結合型スイッチ複合体の極低温電子顕微でのデータ収集と構造解析に集中する予定である。このため試料調製のために試薬とプラスチック製機器、極低温電子顕微鏡用の試料作製に用いるエタンとグリッドを購入する。また高分解能に向けた構造解析を進めていくためデータバックアップ用のハードディスクを購入する。また研究の成果を発表するために旅費と論文投稿費を申請する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Common and distinct structural features of Salmonella injectisome and flagellar basal body.2013

    • 著者名/発表者名
      Kawamoto, A., Morimoto, Y.V., Miyata, T., Minamino, T., Hughes, K.T., Kato, T. & Namba, K.
    • 雑誌名

      Scientific Reports,

      巻: 3 ページ: 3369

    • DOI

      10.1038/srep03369

  • [雑誌論文] Common evolutionary origin for the rotor domain of rotary ATPases and Flagellar protein export apparatus.2013

    • 著者名/発表者名
      Kishikawa, J, Ibuki, T., Nakamura, S., Nakanishi, A., Minamino, T., Miyata, T., Namba, K., Konno, H., Ueno, H., Imada, K. & Yokoyama, K.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 18 ページ: e64695

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0064695

  • [学会発表] 細菌べん毛基部体におけるスイッチ蛋白質FliGの位置と向きの同定.2014

    • 著者名/発表者名
      宮田知子.
    • 学会等名
      2013年度・第19回べん毛研究交流会
    • 発表場所
      県立広島大学サテライトキャンパス(広島県)
    • 年月日
      20140301-20140303
  • [学会発表] Functional analysis of the bacterial flagellar motor in fliFG fusion mutants.2014

    • 著者名/発表者名
      Mori, K., Hiraoka, K., Morimoto, Y.V., Miyata, T., Kami-ike, N., Minamino, T., Namba, K.
    • 学会等名
      GRC on Sensory Transduction in Microorganisms
    • 発表場所
      Ventura Beach Marriott (USA)
    • 年月日
      20140113-20140114
  • [学会発表] 電子線トモグラフィーによる生体試料の立体構造解析.

    • 著者名/発表者名
      加藤貴之, Ruan Juanfang, 川本晃大, 宮田知子, 難波啓一.
    • 学会等名
      日本農芸化学会2014年度大会
    • 発表場所
      明治大学生田キャンパス(神奈川県)
    • 招待講演
  • [学会発表] fliFG融合変異株のべん毛モーターの機能解析.

    • 著者名/発表者名
      森広一郎, 平岡孝一, 森本雄祐, 宮田知子, 上池伸徳, 南野徹, 難波啓一.
    • 学会等名
      日本生体エネルギー研究会第39回討論会
    • 発表場所
      静岡県コンベンションアーツセンター(静岡県)
  • [学会発表] Common and distinct structural features of Salmonella injectisome and flagellar basal body.

    • 著者名/発表者名
      Kawamoto, A., Morimoto, Y.V., Miyata, T., Minamino, T., Hughes, K.T., Kato, T., Namba, K.
    • 学会等名
      GRC on Sensory Transduction in Microorganisms
    • 発表場所
      Ventura Beach Marriott (USA)
  • [学会発表] サルモネラ菌ニードル複合体およびべん毛III型分泌装置の細胞内機能構造.

    • 著者名/発表者名
      川本晃大, 森本雄祐, 宮田知子, 南野徹, Kelly T. Hughes, 加藤貴之, 難波啓一.
    • 学会等名
      第87回日本細菌学会総会,
    • 発表場所
      タワーホール船堀(東京都)
  • [学会発表] 細菌べん毛モーターの回転方向変換制御機構の解明.

    • 著者名/発表者名
      宮田知子, 加藤貴之, 藤井高志, 森本雄祐, 中村修一, 南野徹, 松波秀行, 難波啓一.
    • 学会等名
      日本顕微鏡学会第69回学術講演会.
    • 発表場所
      ホテル阪急エキスポパーク(大阪府)
  • [備考] プロトニックナノマシン研究室〈難波教授〉

    • URL

      http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/jpn/general/lab/02/result/

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公開日: 2015-05-28  

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