細菌べん毛モーターの回転方向制御機構を明らかにするために、極低温電子顕微鏡による単粒子解析により回転方向の制御に関わるスイッチ複合体(Cリング)の構造解析を行った。回転方向変換時の構造変化を可視化するために左回転(CCW)または右回転(CW)に偏った回転を示す変異体のCリングの能構造解析を行た。両者の構造に大きな構造変化がみられたが、これらの構造の分解能は1.7~1.8nm程度であり、すべてのスイッチ蛋白質の位置と配向を決めることはできなかった。しかし、スイッチ蛋白質FliM、FliNはそれぞれCリングの外側の円筒の中央と下部領域に置くことができ、特にFliMは回転方向の変換時に配向が変化することを示した。 スイッチ蛋白質FliGの配置はCリングの内側のリングと外側の円筒の上部からなると考えられていて、この領域はちょうど対称性のミスマッチが起きているため詳細な構造決定はできていない。そこで回転子FliFのC末端とFliG N末端の欠損融合株とFliGのN末端に蛍光蛋白質を結合させたCリング構造を比較した。この結果内側のリングはFliGのN末端領域から成り、N末端は内側のリングのさらに内側を向くことを示した。 シグナル蛋白質CheY-p結合型Cリングの構造解析を行うため、CheY-pと同等に作用する変異型CheY (D13K、Y106W)のC末端に蛍光蛋白質YFPを融合し、このYFP融合型CheY/Cリング複合体の再構成条件の検討を行い、以前の報告と同様にYFP融合型CheYがCW型のCリングと複合体を形成できることを示した。得られたYFP融合型CheY/Cリング複合体の構造解析によってYFP融合型CheY と思われる密度がCリングの外側の円筒下部の外側に確認された。この結合位置は現在のFliMの配置でN末端領域付近にありN末端領域でCheYと相互作用するのに適している。
|