本研究は細菌べん毛の高性能潤滑回転機構の解明を目指して、べん毛のドライブシャフトにあたるロッドの構造を結晶構造解析、低温電子顕微鏡法構造解析、生化学的解析から明らかにしようというものである。 本年度はプロキシマルロッド部分を構成するFlgFタンパク質の結晶化を重点的に行った。全長および重合化しやすい部分を取り除いたFlgF試料を作製し、結晶化スクリーニングを行ったところ、結晶を得ることはできなかったが、各試料の可溶化条件データを得ることはできた。 また、前年度に解明したFlgG(47-227)の結晶構造を低温電子顕微鏡法により解析したポリロッド変異体の画像モデルにあてはめ生体中のディスタルロッド部分の分子構造を解析する作業をより丁寧に進め、FlgGのコア領域とC末端までの分子構造を明らかにした。 さらに、FlgG(47-227)の結晶構造から、構造的相同性を利用して既知であったフックタンパク質の結晶構造の不明部分の一部を明らかにすることができ、フックタンパク質およびフックの分子構造の精度を向上させるることができた。 本研究課題により細菌べん毛ロッドの大部分を占めるディスタルロッド部分の分子構造が明らかになり、潤滑回転機構解明に大きく貢献した。
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