研究課題/領域番号 |
24570134
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田村 茂彦 九州大学, 基幹教育院, 教授 (90236753)
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研究分担者 |
藤木 幸夫 九州大学, その他部局等, 研究員 (70261237)
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キーワード | ペルオキシソーム / 膜輸送 / タンパク質複合体 / ペルオキシソーム形成因子 |
研究概要 |
これまで、ペルオキシソームマトリックスタンパク質を内腔側へ輸送するための膜透過装置複合体はPex14pを主な構成タンパク質としていること以外、複合体の大きさやタンパク質の組成、膜透過のメカニズム等を含めたその全体像は明らかにされていなかった。これまで、哺乳動物由来の培養細胞からPex14pを主な構成成分とする複合体の効率的な分離・精製を進めてきたが、平成25年度は、ペルオキシソーム膜透過装置複合体の動的な構造変化およびペルオキシソーム移行シグナル受容体であるPex5pとの機能的な相互作用について解析を進め、Pex14p複合体による輸送機序を解明するための分子基盤を得ることを目的とした。 哺乳動物細胞由来のPex14pを含む膜透過装置複合体をBlue Native-PAGEにより複合体I、II、IIIと名付けた3種の複合体として分離・同定し、それぞれ約600kD、800kD、1100kDの分子量であることを見いだした。これら3種のFlag-Pex14p複合体を効率よく分離・回収し、それぞれの複合体の役割およびPex5pとの相互作用について解析を行った。人工リポソーム膜を用いた再構成実験系の結果、複合体IIおよびIIIがPex5pを膜内腔へ輸送する活性を持つこと、Pex5pが結合することによって複合体IIIが解離して複合体IIへ構造変化することを見いだした。このとき、Pex5pとPTS1タンパク質の複合体も複合体IIIに結合して解離させる働きを持つことから、Pex5pとPTS1タンパク質の複合体つまりカーゴタンパク質が膜透過する際の入り口は複合体IIIであることを示唆する結果を得た。また複合体IIIの形成にはPex13pの関与が必要であることを既に見いだしており、膜透過輸送におけるPex14p複合体のダイナミックな構造変化と輸送機序に関する新たな知見が得られたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、設定した目的を達成することができ、今後の研究をさらに進展させていくための基盤を得ることができたと考えているため、おおむね順調に進展していると判断した。Pex14pを主な構成因子とする膜透過装置複合体の構造を詳細に明らかにするには至っていないため、当初の計画以上に進展しているとは評価できない。次年度は、今年度に得られた成果をもとにしてさらに輸送機序解明に向けた研究を進展させる。
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今後の研究の推進方策 |
Pex14pを主な構成因子とする膜透過装置複合体を人工リポソーム膜上に再構成し、ペルオキシソーム膜透過の輸送機序解明へ向けた研究をさらに進展させる。そのためには、(1)膜透過装置複合体の構成因子や大きさ等、構造的な知見を得ること、(2)複合体タンパク質を培養細胞から分離・精製してくるのではなくリコンビナントタンパク質を用いて複合体を調製できるようにすること、(3)人工リポソーム膜への再構成実験系を安定的に構築し、さらにはPex5pおよびカーゴタンパク質輸送の簡便な検出系を開発すること、以上の3項目について重点的に解析を進め、最終的にペルオキシソーム膜透過装置による輸送機序を分子レベルで解明すべく研究を遂行していく。
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