研究課題/領域番号 |
24570135
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
海野 英昭 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10452872)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | CEL-III / PFT / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
病原菌の多くはターゲットとする細胞膜に穴をあける, もしくは毒素を細胞内に送り込むため の膜孔形成毒素(Pore-Forming Toxin:PFT)を有している. PFT による膜孔形成メカニズムは病原菌 の感染および毒性発現に決定的に重要であるが, 未だ原子レベルでのメカニズムは明らかでない. 本研究は, 海産無脊椎動物グミ(C.echinata)由来PFTである溶血性レクチンCEL-IIIの膜孔形成複合体のX線結晶構造解析により, 病原性および毒性発現に極めて重要なPFTの膜孔形成メカニズムを原子レベルで明らかにする事を目的とする. 本年度はその中でも特に膜孔形成複合体の結晶化条件の改良, 重原子誘導体を用いた位相決定および複合体モデル構築を行い, 非常に興味深いCEL-IIIの「画鋲型」7量体膜孔形成型結晶構造を決定する事に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CEL-IIIの膜孔形成複合体結晶構造の決定を目指し, 特に当年度は結晶化条件の最適化および結晶生成の再現性向上を目標として設定し研究を進めた. 各種条件検討の結果, その目的であった結晶化条件の最適化および結晶再現性の向上に成功し, 最高分解能2.9オングストロームの結晶を得る事に加え, 分解能3オングストローム台前半の結晶を再現性良く生成する結晶化条件を見出した. さらに, 当初の計画以上の成果として, その結晶を用いて各種重原子誘導体結晶の作成, 位相計算, 位相改良, モデル構築および構造精密化を進め, CEL-IIIの膜孔形成複合体構造である「画鋲型」7量体構造を得る事に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
得られた膜孔形成7量体構造の精密化をさらに進め, その詳細な構造解析を行うとともに, 初期の実験計画の1年前倒しを行い, 当初26年度計画であったCEL-III オリゴマー-ラクトシルセラミド複合体結晶構造解析による膜孔形成複合体形成機構の解明を進める. また26年度計画として新たに, 高速AFM観察によるCEL-IIIの膜孔形成形成メカニズムの解明を計画に加え, それらを総合する事でより詳細な膜孔形成メカニズム解明を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
CEL-III膜孔形成複合体の構造解析, およびCEL-III - ラクトシルセラミド複合体結晶構造解析を進めるため, 研究費は主にCEL-III精製およびタンパク質結晶化に関する機器, 消耗品, および計算用ワークステーション(PC)の購入に充てる. また, 放射光施設への旅費, 実験生物材料(グミ)入手に関連する費用, 学会発表のための旅費, および論文発表のための雑誌への投稿費用としても使用する予定である.
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