研究課題/領域番号 |
24570137
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
井原 義人 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70263241)
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研究分担者 |
井内 陽子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20316087)
池崎 みどり 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40549747)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖質 / 糖ペプチド / TGF-β / シグナル伝達 |
研究概要 |
(1)研究の目的:本研究では、我々が発見したC-Man化ペプチドによるトランスフォーミング増殖因子-β (TGF-β)誘導性細胞増殖に対する抑制制御の知見をもとに、C-Man化ペプチドあるいはTSRドメインのTGF-βシグナルに対する新たな作用機構と、その標的制御分子を明らかにすることを目的とする。 (2)研究実施内容:C-Man化TSRペプチド(C-Man-Trp-Ser-Pro-Trpなど)やその誘導体は、我々の既報に従い化学合成により調製した。また、ヒトトロンボスポンジン-1 cDNAを鋳型にMyc+His-Tag標識融合タンパク質としてTSRドメインをほ乳類細胞で発現させる遺伝子発現ベクターを設計構築した。HEK細胞に発現ベクターを導入し、分泌型タンパク質として産生させ、目的タンパク質を細胞培地からイオン交換や親和性クロマトグラフィーにより調製した。ラット線維芽細胞NRK49Fを用いて、C-Man化TSRペプチドやC-Man化TSRドメインが、TGF-β誘導性の細胞増殖やシグナル伝達に与える影響について、細胞生物学的あるいは生化学的手法や細胞の免疫蛍光染色などの手法で解析した。 (3)研究結果:C-Man化TSRペプチドが、線維芽細胞株におけるTGF-β誘導性の細胞増殖を抑制し、コラーゲン Iなどの標的タンパク質の産生を抑えることが明らかとなった。また、C-Man化TSRペプチドはTGF-βの細胞表面受容体に対する結合を直接的には阻害しなかった。さらに、C-Man化TSRペプチド結合分子の解析により、Myosin 1c、Hsc70などが結合分子の候補として同定された。これらの知見は、C-Man化TSRペプチドが新規な経路を介してTGF-β誘導性細胞増殖を制御する可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従って研究は進捗している。C-Man化TSRペプチドが新規の経路を介してTGF-β誘導性細胞増殖を制御する新たな分子機構の存在を発見した。しかし、この分子機構の詳細は不明な点が多い。そこで今後は、C-Man化されたTSRペプチドのもつTGF-βシグナル抑制制御について、C-Man化ペプチドの機能発現の構造特異性や、標的結合分子との相互作用と細胞機能における役割等についての解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
C-Man化TSRペプチドが新規の経路を介してTGF-β誘導性細胞増殖を制御する可能性が示唆された。今後は、C-Man化TSRペプチドの増殖制御の作用点にあたる分子機構の解明を目指す。現在、新たに同定されたC-Man化TSRペプチドの結合分子の解析を試みており、これら分子群の細胞生理機能の解析を進める。また、当初計画にあるマウス創傷治癒モデルを用いたC-Man化TSRペプチドの生理作用解析実験を進め、動物個体レベルでのTGF-βシグナル制御についての解析へと展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、精密化学合成により調製する各種糖ペプチドと、遺伝子組み換えタンパク質として調製するC-Man化モデルタンパク質を研究試料として、細胞生物学実験や動物実験に応用していくという点が特徴的な研究手法といえる。そこで次年度も、研究費の主たる部分は、モデルペプチドやタンパク質の合成、調製のために必要な研究試薬、材料に使用する。さらに、マウス創傷治癒モデルを用いたC-Man化TSRペプチドの生理作用解析実験の準備と開始にあたって、研究用マウスや動物実験における研究材料の調達にも研究費を充当する。
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