研究課題
消化管共生細菌のうち、グラム陽性細菌は、リン脂質としてホスファチジルグリセロールとカルジオリピンを、糖脂質としてグリセロ型糖脂質を細胞膜成分として含んでいる。グリセロ型糖脂質の糖鎖は強力な抗原性を発揮し、中でも、ヒトやマウスの腸内乳酸菌として知られているL. johnsoniiの3糖LacTH-DG (Galα1-6Galα1-2Glcα1-3’DG)および4糖LacTetH-DG (Galα1-6Galα1-6Galα1-2Glcα1-3’DG)に対する抗体は、ヒト血中にも自然抗体として検出される。共生細菌の糖脂質に対する免疫応答は免疫システムを介した共生関係の成立に重要であると考えられるため、同様にヒト血中に含まれるABO血液型や動物種特異的糖脂質に対する自然抗体との反応強度をTLC免疫染色法を用いて比較した。LacTH-DG、 LacTetH-DGに対する自然抗体を持つA型、B型、AB型、O型ヒト血清のうち、ELISA抗体価の最も高い血清について調べた結果、ABO血液型に関わりなく、すべての血清に含有され、その反応強度は、A型糖脂質Aa、Ab、およびB型糖脂質B-I、B-IIに対する強度に匹敵していた。さらに、動物種特異的スフィンゴ糖脂質に対する抗体として、共通にIV3Galα-nLc4Cer、Gg4Cerに対する抗体が含まれていて、これらの糖脂質に対する抗体の反応強度もLacTH-DG、LacTetH-DGに対する反応強度に匹敵していた。ABO血液型や動物種特異的スフィンゴ糖脂質に対する抗体は、類似糖鎖を持つ細菌に対する免疫反応の結果生成されていると考えられ、乳酸菌LacTH-DGとLacTetH-DGに対する抗体生成と同じ仕組みと思われた。Staphylococcus属StaDH-DGおよびGg3Cer、IV3GalNAcα-Gb4Cer(フォルスマン糖脂質)に対する抗体に関しては持っていないヒトがあり、感染履歴を反映していると考えられた。強い免疫応答によって拒絶するよりも免疫応答が可能な細菌と弱く持続的な免疫反応を行うことで共生関係を結んでいる可能性がある。
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