研究課題/領域番号 |
24570142
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
山口 壹範 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (80373215)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細胞膜 / 細胞内輸送 |
研究概要 |
NEU3シアリダーゼは糖鎖代謝酵素の一種で、シグナル伝達系を調節し、神経細胞や血液細胞の分化、あるいはがんや糖尿病の発症に関与している。多くの糖鎖代謝酵素が主にリソソームに局在するのに対し、受容体刺激後、NEU3が細胞質内から細胞膜近傍に移行することを我々は見いだした。この移行メカニズムとその生理的意義を明らかにするため24年度は以下の実験を行った。 1、NEU3の細胞内輸送機構解析に適する細胞株を選択した。EGF刺激によるNEU3の局在変化が顕著であるA431細胞と、evectin(NEU3と相互作用し、また小胞輸送に関与することが報告されている)の細胞内局在の解析に用いられているCOS7細胞が使用可能であることを確認した。COS7におけるNEU3の細胞膜移行に関しては、EGF刺激より血清刺激による変化が顕著で、解析に適していることがわかった。 2、これまでの結果からNEU3の細胞膜への移行が小胞輸送を介して行われることが予想された。そこで小胞輸送に関与する分子(Rab11等)の野生型と変異型の発現ベクターを準備した。これらを細胞に導入し、小胞輸送を亢進/抑制した時のNEU3の細胞内局在を解析する予定である。 3、NEU3の細胞内輸送に関与するタンパク質を同定するため、NEU3と相互作用するタンパク質の同定を行った。yeast two hybrid systemでのスクリーニングを行い。数種の候補クローンが得られた。それぞれの発現ベクターを作製し、これをNEU3と共に細胞で発現させ、相互作用するかを免疫沈降法で確認している。また別のスクリーニング系としてTAP(tandem affinity purification)法の実験系を構築している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度は次年度以降の研究のための実験系の確立という側面があり、この点では目的を達成することができた。具体的には実験系となる細胞株の選定、NEU3と相互作用する候補分子の同定、小胞輸送関連分子の発現ベクターの準備等である。これらにより25年度以降の研究の遂行が可能となった。ただし、TAP法の実験系及びNEU3の細胞内局在を解析するための免疫電顕に関しては、再現性の良い結果を得る為にさらに条件検討を行うことが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
1、NEU3と相互作用するタンパク質の同定。24年度にyeast two hybrid法で単離したクローンがNEU3と相互作用するか、免疫沈降法により確認する。またTAP法の実験系を確立し、相互作用するタンパク質を同定する。 2、細胞内局在に関与するNEU3のドメインの決定。これまでに相互作用する分子として同定されたEvectin、ホスファチジルセリン(PS)及び新規に同定するタンパク質を対象とする。具体的にはNEU3をいくつかのフラグメントに分割し、各フラグメントをGST融合タンパク質として細胞内で発現させ各分子との結合を調べる。対象がEvectin等のタンパク質の場合はpull down assayにより、PSの場合は脂質をメンブレンに固定したアレイ(市販品)により調べる。同定した結合ドメインに変異を導入し、NEU3の細胞内局在への影響を確認する。 3、NEU3の細胞膜移行が小胞輸送を介して行われるか確認するため、細胞内輸送系を阻害剤、あるいは24年度に準備した小胞輸送関連タンパク質(Rab5、Rab11等)の変異体により抑制し、NEU3の細胞膜移行に対する影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度と同様に主に消耗品費として使用する予定。内訳は主に細胞培養用試薬と器材、分子生物学実験用試薬等である。また研究成果発表のための学会参加を予定しており、参加費及び旅費の支出が必要となる。
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