研究課題
NEU3シアリダーゼは糖代謝酵素の一種で、シグナル伝達系を調節し、細胞分化やがん、糖尿病等の疾患発症に関与している。この酵素は受容体刺激後、細胞質内から細胞膜近傍に移行するという、糖代謝酵素としてはユニークな性質を持っている。この細胞内局在の変化とその生理的意義を明らかにするため、25年度は以下の解析を行った。1)NEU3がそのN末端領域(1-243)でevectin1 (PLEKHB1)と相互作用することが明らかになった。evectin1がNEU3と相互作用することをyeast two hybrid系においてこれまでに示している、また、evectin1は細胞内小胞輸送への関与が報告されており、NEU3の膜移行への関与しているものと推察している。今後2つのタンパク質の相互作用の解析を通してNEU3の膜移行の分子機構を明らかにする予定でいる。2)NEU3の膜移行への関与が期待される小胞輸送関連タンパクの正常及び変異体の発現ベクターを導入し、NEU3の細胞膜移行への影響を検討したが、現在のところ大きな変化は観察されていない。3)NEU3と相互作用するタンパクとして新たにCAMK1Gをyeast two hybrid系により同定した。NEU3はそのC末端領域でCAMK1Gと相互作用していることが推定された。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の実験計画のうち1)evectin1との相互作用部位の同定、2)新規相互作用分子の同定(CAMK1G)に関しては、引き続き検討を要する部分(より詳細な相互作用領域の特定など)も残されているが、所期の目的を達成することができた。3)小胞輸送関連分子による制御に関しては当初の見込みと異なり、NEU3の膜移行に関与する分子の特定までにはいたらなかった。以上から一部遅れは有るもののおおむね順調に進展していると考えている。
1)evectin、CAMK1Gとの相互作用領域をさらに詳細に検討する。具体的には相互作用に関与するドメインの最小領域の同定と、このドメインに変異を導入した場合の膜移行に及ぼす影響を検討する。2)NEU3の膜移行に関与する小胞輸送関連タンパクの同定を引き続き行う。検討する関連タンパクの範囲を広げ、解析を行う。3)NEU3が他の膜タンパクの細胞内輸送の制御を行っているか確認するため、NEU3の正常及び欠失変異体を細胞で過剰発現させ、モデル膜タンパク質(EGFR, transferrin receptorなど)の膜局在に及ぼす影響を解析する。
NEU3の膜移行に関与する小胞輸送関連分子が同定できず、それ以降の解析に必要な試薬や消耗品類の購入を行わなかった。NEU3の膜移行に関与する小胞輸送関連分子の同定を対象範囲を広げて同定する、そのための試薬、消耗品類の購入に充てる。
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Cancer Sci.
巻: Epub ページ: Epub
PLoS One
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