研究課題
本研究ではアルツハイマー病などの、タンパク質凝集が原因とされるタンパク質ミスフォールディング病の機構を明らかにすることを目的としている。近年タンパク質ミスフォールディング病とよばれる、天然構造が壊れた (ミスフォールディングした)タンパク質が凝集することが原因で病気が引き起こされる例が多く見つかり、社会的問題となっている。代表的な疾病であるアルツハイマー病においては、アミロイドβタンパク質(Aβ)などの凝集体が主な病因であると考えられている。一方、生体内では、分子シャペロンタンパク質がタンパク質の凝集抑制に関与していることが知られている。本研究はAβなどのタンパク質凝集における分子シャペロンタンパク質の働きを明らかにし、臨床応用への研究基盤を明らかにすることを目指している。本年度は、昨年度に引き続き、分子シャペロンの一つであるヒト由来のスモールヒートショックプロテイン(sHsp)がAβ凝集に与える影響を調べた。sHspは熱などのストレス依存的な会合状態変化などのダイナミックな構造変化が分子シャペロンとしての機能発現に重要であり、リン酸化により会合状態を制御したsHspを用いてAβ凝集への影響を調べたところ、会合状態であっても解離状態であってもAβ凝集を抑制することが示された。シャペロン構造を詳細に調べても優位な差異はなく、sHspが構造状態に関わらずAβ凝集および毒性を抑制していることが示された。さらに本年度は金ナノ粒子を用いてアミロイド凝集を超高感度に検出する手法を開発した。Aβ抗体を修飾した金ナノ粒子がAβ凝集に結合して生成するナノ粒子凝集を暗視野顕微鏡により単一クラスターレベルで観察することで、40 pMのAβ凝集を検出することに成功した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 7件)
Analytical Sciences
巻: 32 ページ: 307-311
10.2116/analsci.32.307
Journal of Molecular Biology
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.jmb.2016.04.006