本申請で用いるスフィンゴ糖脂質floxマウスは、最低15代以上のバッククロスが完了し、C57BL/6バックグラウンドとして本研究で用いた。また、細胞特異的遺伝子変異マウス作製は、Lck-Creマウスを用い、T細胞特異的に遺伝子を欠損させた。当該マウスの解析結果の一部として前年度は、T細胞におけるスフィンゴ糖脂質の発現量に関して、未成熟期のT細胞では、スフィンゴ脂質の発現の減少が僅かであるが、末梢血中のT細胞のスフィンゴ脂質はほぼ完全に消滅した。等の結果が得られた。今年度は、これらマウスを用い、リウマチモデルの作製を行い、以下の結果を得た。これに先立ち既に先行研究の結果として、GM3を欠損したマウスにおける病態、サイトカイン発現等の結果を発表した。本研究は、リウマチの発症機序とその病態を解析する上で、有用なモデルとなりうる。つまり、細胞膜にスフィンゴ脂質が存在しない場合のT細胞の機能を、サイトカインの発現や発症時期、発症頻度および病態そのものからの解析可能である。最も特筆すべき変化は、スフィンゴ脂質の有無およびサイトカインの産生にある程度の相関が示された。また、リウマチの発症時期、発症頻度には大きな違いは現れなかったが、その病態には変化が観察された。結果的に、GM3ノックアウトマウスに比べ、症状の軽度化は観察されたが、サイトカイン等のT細胞の機能は、スフィンゴ脂質の一分子であるGM3の欠損においてもトータルスフィンゴ脂質欠損においても顕著な違いは観察されなかった。一方、大腸炎発症と増悪におけるスフィンゴ脂質の関与が示唆される研究結果が得られた。このメカニズムとして、細胞内セラミドの存在量およびセラミドを基質として合成される他のスフィンゴ脂質の存在比率によるものであることが示唆された。今後は、これら疾患における免疫反応とセラミドを中心としたスフィンゴ脂質の関与を明らかにする。
|