研究課題/領域番号 |
24570146
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中馬 吉郎 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40372263)
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研究分担者 |
坂口 和靖 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00315053)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ホスファターゼ / 酵素 / 染色体不安定性 / がん |
研究概要 |
平成24年度は、PPM1D-TOP2Aの相互作用がもたらすTOP2A機能制御の分子基盤解明の研究を実施した。まず、細胞内におけるPPM1DとTOP2Aとの局在を解析するため、EGFP-PPM1DをH1299細胞に発現させた。その結果、EGFP-PPM1D発現細胞では、染色体不安定性の指標であるDNAブリッジを形成する細胞が顕著に増加した。興味深いことに、DNAブリッジ上にはEGFP-PPM1Dと内在性TOP2Aが共局在することが明らかとなり、染色体分離におけるTOP2A機能をPPM1Dが阻害している可能性が示唆された。次に、PPM1D過剰発現によるTOP2Aのタンパク質レベルへの効果について解析した。PPM1Dの発現量増加に伴い、TOP2Aの発現量も増加するとともに、PPM1DによるTOP2Aの増加はp53非依存的であることが明らかとなった。Phos-Tag含有アクリルアミドゲルを用いた解析よりPPM1D過剰発現細胞では低リン酸化状態のTOP2Aが顕著に増加していることが判明した。一方、PPM1D過剰発現細胞では、TOP2Aのデカテネーション活性が減少していることが明らかとなった。これらのことから、「PPM1Dの過剰発現によりTOP2A活性が低下し、染色体分離異常を引き起こす」可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の当初の研究計画は、1.PPM1DおよびTOP2Aにおける相互作用部位の同定、2.PPM1DとTOP2Aの細胞内局在の解析、3.PPM1DによるTOP2Aのリン酸化状態への影響、4.PPM1DによるTOP2Aの酵素活性への効果であった。これらの実験をおおむね完了しており、「PPM1Dの過剰発現によりTOP2A活性低下がし、染色体分離異常を引き起こす」というモデルを提案するに至り、PPM1DによるTOP2A制御破綻制御機構について新たな知見を与えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は当初の研究計画どおりにおおむね進んでいる。そこで、平成25年度についても当初の研究計画どおりに5.抗リン酸化ペプチド抗体を用いたTOP2A脱リン酸化部位の同定、6.TOP2A結合タンパク質のリン酸化レベル解析、7.PPM1D発現量に依存したゲノム不安定化の定量的解析を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、抗リン酸化ペプチド抗体作製のためのリン酸化ペプチドの合成試薬、細胞培養のための培地などの試薬、ならびに抗体、酵素、キット類などタンパク質・DNA解析試薬等が必要となる。また、プラスチックチューブ、細胞培養ディッシュなどの消耗品が必要となる。これら試薬、ならびにプラスチック製品の消耗品代として、1,132,983円を計画している。 また、国内旅費(200千円/2回)および海外旅費(100千円/1回)に関しては本研究の研究成果発表のため必須であり、本研究のまとめとして英文校正料、研究成果投稿料(100千円)を計画している。
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