研究実績の概要 |
鉄硫黄(Fe-S)クラスターは、複雑な多成分酵素系(マシナリー)の働きによって形成されることが知られている。大腸菌はiscオペロンにコードされるISCマシナリーと、sufオペロンにコードされるSUFマシナリーという2種類のFe-Sクラスター生合成系を有しており、これらが独立してクラスターの形成を担っている。近年私たちは、大腸菌のイソプレノイド代謝経路を改変することによってFe-Sクラスター生合成マシナリーの必須性を回避し、両マシナリーをコードする遺伝子群を自在に操作できる実験系を開発した。H26年度はこのin vivo実験系を駆使して、sufオペロンを欠失したバックグランドでiscオペロンの7種類の遺伝子をそれぞれ破壊した二重破壊株を構築し、それらの表現型を詳細に比較・解析することによって以下の新知見を得た。すなわち、IscS, IscU, IscA, HscB, HscA, Fdxの6つの因子は、好気条件下でISCマシナリーの機能に必須だが、嫌気的な条件下ではIscAとFdxは必ずしも必要ではないことを見出した。また、これらの変異株において、種々のフェレドキシンにおけるFe-Sクラスターの形成量を調べた結果、好気条件下でISCマシナリーの機能に必須な6つの因子は、いずれも4Fe-4Sクラスターの形成に必須であることが分かった。それらのうちIscS, IscU, HscB, HscA, Fdxの5種類は4Fe-4Sクラスターだけでなく2Fe-2Sクラスターの形成にも必須だが、興味深いことに、IscAは2Fe-2Sクラスターの形成には関与しないことが判明した。したがって、このマシナリーでは、IscS, IscU, HscB, HscA, Fdxの5種類の成分で2Fe-2Sクラスターを形成した後、IscAの働きによって4Fe-4Sクラスターに変換されると考えられる。
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