研究実績の概要 |
鉄硫黄(Fe-S)クラスターは、複雑な多成分酵素系(マシナリー)の働きによって形成されることが知られている。私たちは、大腸菌のイソプレノイド代謝経路を改変することによってFe-Sクラスター生合成マシナリーの必須性を回避し、関与する遺伝子群を自在に操作できる実験系を開発した。本研究課題ではこのin vivo実験系を駆使してISCマシナリーの6種類の成分の詳細な解析を行い、個々の成分の役割や相互作用、マシナリーとしての作動機構について、以下の重要な知見を得た。 1. ISCマシナリーの成分のうち、IscAは4Fe-4Sクラスター形成にのみ関与することを見出した。ISCマシナリーではIscS, IscU, HscB, HscA, Fdxの5種類の成分で2Fe-2Sクラスターを形成し、その後、IscAの働きによって4Fe-4Sクラスターに変換されると考えられる。 2. IscUの機能に必須な7残基を同定し、さらに、IscU のTyr3変異をサプレスする二次的な変異をIscS内に見出した。このTyr3はIscSとの相互作用(硫黄原子の受け渡し)において、IscSの活性中心ループの構造変化を引き起こす可能性が浮上した。 3. HscAとHscBはISCマシナリーに必須な分子シャペロンとコシャペロンだが、それらの欠損をサプレスする変異をIscUコード域に見出した。変異型IscUタンパク質をin vitroで解析することによって、IscUはstructuredとdisorderedの2種類の分子形態をとることが必要であり、その変換にHscAとHscBが関与すると考えられる。 4. 平成27年度は、Fdxの機能に必須な6残基を同定し、さらに、サプレッサー変異やin vitroの解析から、FdxはIscSと一過性の相互作用(電子伝達)をすることが判明した。また、高度好熱菌Aquifex aeolicusのIscSとIscUは複合体を形成し、その中に新生2Fe-2Sクラスターを安定に保持することを見出した。
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