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2012 年度 実施状況報告書

E3リガーゼSCFーFbw7の新規機能の解析

研究課題

研究課題/領域番号 24570151
研究種目

基盤研究(C)

研究機関浜松医科大学

研究代表者

北川 恭子  浜松医科大学, 医学部, 助教 (20299605)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードタンパク分解 / Fbw7
研究概要

Fbw7の既知の基質の多くはコンセンサス配列(CPD)を持つことが報告されており、しかもCPD はGSK3によってリン酸化される事がFbw7の結合認識に重要なイベントとなることが多い。このことを手がかりにして、GATA-3に対するFbw7のE3 ligase としての関与が見出され、本課題の研究の土台となった。当該年度はFbw7によるユビキチン化がGATA-3にとってどのような意義を持つ修飾であるのか、検証を進めた。MS解析およびin vivo ユビキチン化アッセイなどの結果から、CPD依存的なFbw7によるユビキチン化修飾は、他の部位のリン酸化修飾によって抑制されることがわかってきた。細胞株を用いた内因性GATA-3 とFbw7の量的制御における関係は明確に観察されず、これはCPD以外でのリン酸化が細胞内で発生する事でより複雑な制御が起こっているためではないかと推測された。Fbw7の基質はこれまでに多数報告されているが、基質のユビキチン化においてCPD以外の二次的なリン酸化修飾の制御機構が認められた報告例はなく、25年度以降の研究でさらに詳細を明らかにしたい。
GATA-3はT細胞の分化制御因子であるため、血球系細胞の分化進行におけるFbw7の機能の重要性が推測される。そこでT 細胞の分化度に焦点をあててT 細胞特異的Fbw7ノックアウトマウスの解析を行った結果、分化の進行に伴って存在量が減少すべき過程でGATA-3の残存が認められた。既報のGATA-3の下流因子を対象に発現変動を検討したが、明確な連動因子は見つからなかった。その一方でGATA-3の異常蓄積を認めたlineageでは、分化の遅滞と細胞死の亢進が観察された。このことはFbw7がT細胞におけるGATA-3の量的変動の制御に関与して、分化進行を促している事を示すものと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Fbw7の E3 ligaseとしての基質との関与は、これまでにユビキチンプロテアソーム系によるタンパク分解の亢進をもたらす作用とそのメカニズムについて解明が進んできた。本課題ではGATA-3に対してはFbw7の関与が分解以外の関与をもたらす可能性に着目しているが、培養細胞を用いたin vivo レベルでの解析とともに、MS解析などin vitro レベルでの解析を加えたデータを得る事ができた。その結果、複数箇所のリン酸化修飾が、Fbw7のGATA-3に対する分解誘導因子としての機能を正負両方向に制御していることを見出す事ができた。このような制御は他の基質においては未だ報告がなく、今回得られた知見は、Fbw7の機能に対する緻密な制御機構が多くの基質においても稼働していることを推測させるものである。
また、GATA-3に対するFbw7の関与の生理的意義は、T細胞特異的なFbw7コンディショナルノックアウトマウスを対象にする事で解析が可能となり、データは順調に蓄積中である。

今後の研究の推進方策

Fbw7の機能制御にリン酸化が当初の予想以上に重要な役割を担っている事が判明したので、これに関わっているキナーゼの特性やその活性制御機構にも注目しながら、細胞内でのGATA-3制御機構を調べていく。
T細胞の分化過程では、異所的なGATA-3の存在はアレルギー疾患などの原因になることが報告されている。そこで、個体レベルでのFbw7が担うGATA-3タンパク質の量的制御の重要性について、T細胞特異的Fbw7コンディショナルノックアウトマウスを対象にした解析を更に進めていく。Fbw7遺伝子の異常が複数の癌種で高頻度に見つかっていることから、Fbw7の生体内での役割としては癌発症抑制の機能に注目が集まっているが、次年度の研究成果によって、Fbw7が基質分解を介して生体の恒常性維持において癌抑制以外にもどのような関与を持っているのか、新しい知見を得たい。

次年度の研究費の使用計画

実験の内容としては、培養細胞を用いたin vivo系のタンパク修飾および分解に関する実験、リコンビナントキナーゼを用いたin vitro リン酸化およびその関連実験、遺伝子改変マウスを用いた疾患発症リスクの検討、胸腺および脾臓などからFACS分画したlineage細胞を対象とする分化度などの各種解析が予定される。
次年度研究費は、これらの実験に必要な抗体や酵素など各種試薬とプラスチック器具などの各種消耗品、および動物維持の諸費用などに充てるとともに、得られた知見を学術学会で発表するための諸費に用いる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Decreased tonic inhibition in cerebellar granule cells causes motor dysfunction in a mouse model of angelman syndrome.2012

    • 著者名/発表者名
      1. Egawa, K., Kitagawa, K., Inoue, K., Takayama, M., Takayama, C., Saitoh, S., Kishino, T., Kitagawa, M. and Fukuda, A.
    • 雑誌名

      Sci. Transl. Med.

      巻: 4 ページ: 163ra 157

    • DOI

      10.1126/scitranslmed.3004655.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The SCF ubiquitin ligases involved in hematopoietic lineage.2012

    • 著者名/発表者名
      Kitagawa K. and Kitagawa M.
    • 雑誌名

      Curr. Drug Targets

      巻: 13 ページ: 641-648

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Aldehyde-stress resulting from Aldh2 mutation promotes osteoporosis due to impaired osteoblastogenesis2012

    • 著者名/発表者名
      Hoshi H, Hao W, Fujita Y, Funayama A, Miyauchi Y, Hashimoto K, Miyamoto K, Iwasaki R, Sato Y, Kobayashi T, Miyamoto H, Yoshida S, Mori T, Kanagawa H, Katsuyama E, Fujie A, Kitagawa K et. al.
    • 雑誌名

      J. Bone Miner. Res.

      巻: 27 ページ: 2015-2023

    • DOI

      10.1002/jbmr.1634.

    • 査読あり
  • [学会発表] 転写因子GATA3の安定性の制御に関わるリン酸化とユビキチン化修飾機構2012

    • 著者名/発表者名
      北川恭子 松本雅記 北川雅敏
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121211-20121214
  • [学会発表] Skp2ノックアウトマウスで見られた腎障害の軽減はSkp2-p27ダブルノックアウトマウスで解除される2012

    • 著者名/発表者名
      鈴木小由里 深澤洋敬 三崎太郎 戸川証 大橋温 北川恭子 神武洋二郎 Liu Ning 丹伊田浩行 山本龍夫 北川雅敏
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121211-20121214
  • [学会発表] 転写因子YB-1の新規標的遺伝子としてのCyclin D1 の解析と非小細胞肺癌における解析2012

    • 著者名/発表者名
      原田雅教 神武洋二郎 鈴木小由里 大畑樹也 北川恭子 丹伊田浩行 北川雅敏
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121211-20121214
  • [学会発表] リン酸化を介したGATA3転写因子の制御機構2012

    • 著者名/発表者名
      北川恭子 中嶋友美 北川雅敏
    • 学会等名
      第71回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [備考] 浜松医科大学医学科講座等紹介-分子生物学講座

    • URL

      http://www.hama-med.ac.jp/uni_education_igakubu_igaku_seika1.html

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公開日: 2014-07-24  

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