研究課題/領域番号 |
24570152
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
成田 新一郎 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (30338751)
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研究分担者 |
秋山 芳展 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (10192460)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | タンパク質品質管理 / 細菌細胞表層 / シグマE / リポ多糖 / BAM複合体 / 外膜タンパク質 / ジスルフィド結合 / プロテアーゼ |
研究概要 |
大腸菌をはじめとするグラム陰性細菌は、細胞を取り囲む細胞質膜の外側にもう一つの膜構造、外膜を持っている。外膜は有害な物質の侵入を排除するなど、グラム陰性細菌の生育に極めて重要な役割を果たしている。外膜が選択的透過性を備えた透過障壁としての機能を発揮するためには、外膜構成因子の因子の状態をモニターし、変化に対応する品質管理・ストレス応答機構が重要である。σE応答機構は大腸菌における主要な表層ストレス応答機構である。外膜タンパク質のミスフォールディングが起こると、転写因子σEが活性化され、外膜機能の維持に必要な遺伝子群の転写が誘導される。yfgCはσEによって制御される遺伝子で、ペリプラズムのメタロプロテアーゼをコードすると推定されている。yfgC欠失株が様々な薬剤に対して高感受性を示すことから、YfgCは外膜機能の維持に関与していると考えられていた。YfgCのプロテアーゼ活性部位と推定されるHExxHモチーフに変異を導入したところ、yfgC欠失株の薬剤感受性を相補する能力が失われたことから、YfgCはプロテアーゼ活性を持ち、そのことがYfgC機能に重要であることが示唆された。また、YfgCがリポ多糖の輸送に関わる外膜タンパク質LptDの生合成に関わること、LptDが成熟過程で分子内ジスルフィド結合の異性化を経ること、YfgCがその過程を促進することがわかった。LptDのジスルフィド結合異性化は、YfgCプロテアーゼ活性部位変異体の発現によっても部分的に促進されたことから、YfgCはプロテアーゼ活性とは独立したシャペロン様活性を持つものと推測される。さらにYfgCは外膜タンパク質の生合成に関与するBAM複合体と遺伝学的および物理的に相互作用することもわかった。これらの結果から、YfgCが外膜タンパク質のアセンブリーを促進することによって外膜機能の維持に働くことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではプロテアーゼと推定されるYfgCの基質の探索を行うために、Pull-down法、Cross-link法、部位特異的in vitro photo-cross link法の各方法を用いることを計画した。しかし研究遂行過程において、LptDの生合成に関わるLptEを枯渇させるとLptDが不安定化すること、外膜タンパク質の生合成に関わるSurAを欠失する株ではBamAの分解産物が生じることを見出した。更に、これらの現象にはプロテアーゼ活性部位を保持したYfgCが必要であることを見出した。こられの結果から、YfgCがフォールディングに失敗したLptDやBamAを気質として認識し分解することによって外膜機能の維持に働いている可能性が示された。この可能性を検証するためには、精製したYfgCを用いてin vitroにおいてLptDやBamAの分解反応を再構成する必要がある。そこで、こららのタンパク質の発現系の構築および精製法の確立を行った。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究遂行過程においてYfgCがLptDやBamAを基質として認識し分解する可能性が示唆されたことを受け、当該年度に予定していたin vitro photo-cross link実験などを次年度に延期した。次年度は以下の1)~3)の項目に焦点を当てて機能解析に取り組む。 1)プロテアーゼ活性:精製したYfgCによる、LptDやBamAの分解をin vitroで再現する。基質としてはin vitro翻訳系で合成したLptD/BamA、細胞質に蓄積させたLptD/BamAを尿素などによって変性させたもの、LptE枯渇株やsurA欠失株(いずれもyfgC欠失の遺伝的背景を持つ株)の外膜抽出物を検討する。また、レゾルフィン標識カゼイン・BODIPY-casein・FRET peptideなど、一般的なプロテアーゼ活性の測定に用いられる基質も検討する。surA欠失株でYfgCとBamAを過剰発現し、YfgCに依存して出現/消失するバンドを精製しアミノ末端の配列を決定することにより、YfgCによる切断部位に関する情報を得る。切断前断片のみを発現・精製してin vitroでのプロテアーゼ活性測定に用いる。 2)基質との相互作用様式:BepAがBAM複合体と相互作用することが示唆されているが、その様式はわかっていない。部位特異的in vivo光架橋法により両者の近接部位をアミノ酸レベルで同定する。 3)YfgCはLptD生合成のどの段階で働いているか:LptDはBAM複合体を介して外膜に挿入される。YfgCはBAM複合体を通過したLptDに対して作用すると考えられるが、確固とした証拠は得られていない。YfgCがLptD生合成に働く過程を、BAM複合体との関係から見直す。BamAを枯渇させた際のLptDの状態をyfgC欠失株で調べることにより、種々の情報を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に確立したYfgC, LptD, BamAの発現・精製法を用い、次年度はin vitroでのプロテアーゼ活性の解析を行う。汎用試薬・界面活性剤・合成DNA・遠心チューブ類・フィルター類を当初の計画通り購入するほか、当該年度に使用する予定であった研究費はin vitroタンパク質翻訳システム・タンパク質精製カラム・蛍光標識プロテアーゼ基質などの購入に充てる。
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