研究課題
DNAにメチル基が導入される際、どのように制御されるかを理解することは、細胞分化、癌化の分子機構を明らかにするうえで重要なことである。一旦形成されたDNAのメチル化模様を維持する酵素、Dnmt1、のC末端には触媒領域があり、そのN末端側の機能は、まだ充分に明らかになっていない。本年度は、Dnmt1のN末端に存在するRFTS領域に依存した酵素学的性質の違いについて報告した。具体的には、人工的ではあるが、非常に短い12bpのDNAを基質とした際、RFTSを含むDnmt1(Dnmt1(291-1620) )は活性を示さないが、RFTS領域を欠いたDnmt1(Dnmt1(620-1620))は、有意な活性を示すことを見出した。これは、結晶構造から、触媒領域にRFTS領域が刺さりこんでいるため、DNAが認識しにくいのではないかと考え、RFTS領域と触媒領域との間で水素結合を担うアミノ酸に変異を入れたところ、 RFTS領域を含むDnmt1(291-1620)でも、予想通りDnmt1(620-1620)に近い性質を示す結果を得ることができた。一方、DNAメチル化の維持に必須であるUhrf1分子内部のSRAドメインは、ヘミメチル化DNAを認識することが知られている。本年度において、SRAはDnmt1のRFTS領域と結合すること、またSRAの添加により、Dnmt1(291-1620)が活性を示すようになることから、2者の相互作用が触媒活性の制御に関与することを示した。さらなる生化学的解析から、SRAが、そのDNA結合は介さず、Dnmt1のRFTS領域を触媒領域から乖離させ、基質DNAが触媒領域にアクセスできるように制御をかけると提案することができた。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画で、生化学的解析をするのに必要な分子を用意できた。それらを用いて、順に酵素反応速度論的な解析を進めて、成果を出している。ただし、用意できた分子の中には、大量調整が難しいものがあり、その調整過程における回収率の改善が必要となるものがあり、今後の課題として残っている。
現在のところ、研究遂行にあたり、特に大きな問題はなく、本研究計画で提案した計画を順次遂行できると考えている。
今年度に問題が出てきた実験について、来年度にこの未使用金を用いて、研究計画を遂行する実験計画遂行上、実験条件の効率化が必要となる。 その効率化のために、来年度に今年度の予算を合わせ使う。
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