研究課題/領域番号 |
24570160
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小林 英紀 岡山大学, 学内共同利用施設等, 教授 (20150394)
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研究分担者 |
山本 泰 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (40091251)
関口 猛 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60187846)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ユビキチン / ユビキチンレセプター / UBL-UBAタンパク質 / Dsk2 / 高塩ストレス / 栄養ストレス / Gtr1-Gtr2 / TORC1複合体 |
研究概要 |
UBL-UBAユビキチンレセプター(Dsk2,Rad23)は、ユビキチン化した分解タンパク質をプロテアソームへ配送する生理機能に加え、細胞の環境ストレスに応答にした分解タンパク質の仕分と識別に関与することが示唆されてきた。本年度の研究では、 1. 細胞環境ストレスとタンパク質ユビキチン化の関係を解析するため、ユビキチンレセプターDsk2と相互作用するタンパク質をtwo-hybrid法により分離し、出芽酵母の新規Dsk2結合タンパク質Dif1を同定した。Dif1はDsk2と結合するが他のユビキチンレセプター(Rad23, Ddi1)との相互作用はみられなかった。各種ストレス下(DNA損傷、タンパク変性、酸化、塩浸透圧)でDif1のストレス応答の有無を調べた結果、Dif1の過剰発現により高温下の高塩ストレス感受性が、Dif1欠失により高塩ストレス耐性が観察された。調べた他のストレスにたいしては応答しなかった。また、Dif1によるタンパク質分解に対する効果は観察されなかった。Dif1がDsk2の相互作用を介して高塩ストレス応答に関与することが示された。 2. 出芽酵母のGタンパク質Gtr1-Gtr2複合体は、細胞の栄養ストレスを感知するリン酸化酵素複合体TORC1を制御している重要なタンパク質である。Gtr1-Gtr2複合体がどのような仕組みでTORC1を制御しているかを明らかにするため、TORC1と相互作用する他の制御因子(Ego1-Ego3、Kog1-Tco89)とGtr1-Gtr2複合体間の結合様式を解析した。TORC1経路において、Gtr1-Gtr2複合体とEgo3,Tco89の選択的結合はGtr1のGDP/GTP型変換に依存して調節されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ユビキチンレセプターとしての機能を持つUBL-UBAタンパク質(Dsk2,Rad23など)は、ユビキチン依存タンパク質分解経路においてユビキチン化した分解タンパク質をプロテアソームに運ぶユビキチンレセプターとして同定され、ユビキチン-プロテアソーム分解経路の制御因子としての機能を中心に解析が進められてきたが、当初研究計画に従いユビキチンレセプターDsk2と相互作用する調節因子を分離解析したところ、新たに同定した新規因子Dif1が、タンパク質分解経路を介することなく、Dsk2との相互作用により高塩ストレス応答に関与することが示された。本研究結果は、UBL-UBAタンパク質がユビキチン-プロテアソーム分解経路で働くユビキチンレセプターとしての従来からの機能に加え、UBL-UBAタンパク質のストレス応答との新たな関係を示唆する知見として重要である。
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今後の研究の推進方策 |
UBL-UBAタンパク質(Dsk2)は、タンパク質分解経路を介することなくストレス応答に関与することが示されたので、この新しい知見に基づき、UBL-UBAタンパク質(Dsk2)の新たな機能に関する解析を行う。 昨年度の研究成果に基づき、本年度は、栄養ストレス応答におけるTORC1経路とGtr1-Gtr2複合体の関連を知るため、Gタンパク質Gtr1-Gtr2複合体に焦点をあてて「栄養状態を感知する仕組みを制御するタンパク質とユビキチン化の関連性の研究」を進める。 栄養状態を感知する情報はリン酸化酵素複合体TORC1に集約され、その活性がタンパク質合成などの細胞の代謝を制御していることが知られている。我々は、TORC1経路に関与するGtr2タンパク質がタンパク質を合成する場であるリボソームタンパク質と相互作用することを見出した。このリボソームタンパク質RPS31はユビキチンの供与体(UBI3)であり、ユビキチンがリボソーム形成に関与する可能性が示唆されることから、今後は、Gtr1-Gtr2複合体がどのような仕組みでTORC1活性を制御しているかに焦点をあてながら、TORC1経路における栄養ストレスに応答したリボソーム形成とユビキチンの関係について詳細に検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の購入予定額と実際の購入金額に32,049円の差が生じたため。平成25年度の消耗品費の一部として使用する。
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