研究課題/領域番号 |
24570160
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小林 英紀 岡山大学, 学内共同利用施設等, 教授 (20150394)
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研究分担者 |
山本 泰 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (40091251)
関口 猛 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60187846)
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キーワード | ユビキチン / UBL-UBAタンパク質 / Dsk2 / Irc22 / 塩ストレス / 光ストレス / 葉緑体 / チラコイド膜 |
研究概要 |
タンパク質分解は細胞の生理機能の制御において重要な調節的役割を担っている。本年度の研究では、タンパク質分解とストレス応答の関係性を調べた。 1. 環境ストレスとタンパク質ユビキチン化の関係を解析するため、ユビキチンレセプターDsk2と相互作用するタンパク質をtwo-hybrid法により分離して、出芽酵母の新規Dsk2結合タンパク質Irc22を同定した。Irc22はゲノムデータベースに機能未知として記載された遺伝子であった。Irc22の抗体を作成して、ユビキチンレセプターとの相互作用、タンパク質分解、ストレス応答への影響について解析した結果、高塩ストレスに対してDsk2が正に、Irc22が負に相互作用することにより、タンパク質分解を介してストレス応答に関与することが示された。(関口猛、小林英紀) 2. 植物が強すぎる光ストレスにさらされると、光合成システムIIのD1タンパク質とそれに引き続くタンパク質分解が起こることが我々の解析から明らかになっていた。本研究では、この成果に基づいて更に葉緑体の光ストレス応答の解析を進め、光合成を行っている葉緑体に過剰な光が照射されたとき、タンパク質分解にともなって葉緑体チラコイド膜上で光合成関連タンパク質が移動して凝集すること、また膜が本来持っている積み重なり構造が緩むことを示した。本研究をとおして、このタンパク質の凝集は光の強さに応じて変化し、適正内の光の強さの場合は可逆的であるが、光環境が強すぎる場合(光ストレス)には、凝集が不可逆的に起こり、葉緑体の機能が阻害されることが明らかになった。(山本泰、小林英紀)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究成果は、タンパク質分解とストレス応答との関係を酵母の塩ストレスと葉緑体の光ストレスの解析をとおして明らかにできた点にある。UBL-UBAタンパク質Dsk2は、ユビキチン依存タンパク質分解経路において、ユビキチン化した分解タンパク質をプロテアソームに運ぶユビキチンレセプターとしての機能が知られているが、本研究により、ユビキチンレセプターの従来から知られた細胞内機能に加えて、Dsk2がIrc22との相互作用を介して塩ストレス応答に関与することが明らかになった。 また、 光ストレスにおける光合成タンパク質D1の分解とチラコイド膜タンパク質の凝集が葉緑体、ひいては、植物全体の生死を分ける重要な鍵であることが明らかになった。 これらの研究から、タンパク質分解とストレス応答との仕分のしくみを介して、環境への適応が調節されていることが推測できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、タンパク質分解の酵母における塩ストレスと植物葉緑体の光ストレス応答への関与が示された。次年度は、出芽酵母のGタンパク質Gtr1-Gtr2複合体に焦点をあてて、栄養状態を感知する仕組みとタンパク質分解の関連性について研究を進め、栄養ストレスにおけるTORC1経路とGtr1-Gtr2複合体の関連を明らかにしたい。栄養状態を感知する情報はリン酸化酵素複合体TORC1に集約され、その活性がタンパク質合成などの細胞の代謝を制御していることが知られている。Gtr1-Gtr2複合体がどのような仕組みでTORC1活性を制御しているかに焦点をあてながら、TORC1経路における栄養ストレスに応答とタンパク質分解の関係について解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の消耗品に132,049円の未使用額が生じたため。 本年度の消耗品費に繰り込んで使用する予定である。
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