研究課題
平成26年度(最終年度)は、前年度までの研究成果を踏まえ、出芽酵母の栄養ストレスと葉緑体の光ストレスを解析系にして、タンパク質分解が関与するストレス応答について研究をすすめた。(1) 出芽酵母のGタンパク質Gtr1-Gtr2複合体は、細胞のアミノ酸シグナルにより栄養ストレスを感知するリン酸化酵素複合体TORC1を制御している重要なタンパク質である。Gtr1-Gtr2複合体がどのような仕組みでTORC1を制御しているかを明らかにするため、TORC1と相互作用する他の制御因子(Ego1-Ego3、Kog1-Tco89)とGtr1-Gtr2複合体間の結合様式を出芽酵母の遺伝学的解析を行った結果、TORC1経路において、Gtr1-Gtr2複合体とEgo1-Ego3複合体の相互作用には,TORC1コンポーネントのKog1とTco89のGtr1のGDP/GTP型変換に依存した選択的結合を介して調節されていることが示された。(小林英紀、関口猛)(2) 植物が強度の光ストレスにさらされると、光合成システムIIのD1タンパク質が損傷を受けて葉緑体のグラナでFtsHプロテアーゼによりタンパク質分解されることが明らかになっていた。この成果に基づいて本研究では、光照射に伴って引き起こされるチラコイド膜の構造変化とFtsHの分布変化を解析した。電子顕微鏡によりチラコイド膜を観察した結果、FtsHプロテアーゼの分布変化と構造変化の相関がみられた。光ストレスにより、チラコイド膜の凝集が緩んでFtsHプロテアーゼがD1タンパク質にアクセスし易くなってD1タンパク質が分解されるようになることが示された。本研究の構造的解析により、D1タンパク質の凝集は光の強さに応じて変化し、光環境が強すぎる場合(光ストレス)にはチラコイドの凝集とFtsHプロテアーゼの分布が不可逆的に起こることで葉緑体の機能が阻害されることが示された。(山本泰)
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