研究課題/領域番号 |
24570161
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
森 光一 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (50379715)
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研究分担者 |
飛松 孝正 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30188768)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 補酵素B12 / アデノシルコバラミン / ビタミンB12 / コバラミン / ラジカル触媒酵素 / 酵素の再活性化 / メチルマロニルCoAムターゼ / メチルマロン酸尿症 |
研究概要 |
1.ヒトメチルマロニルCoAムターゼ(MCM)およびMMAAの大腸菌での発現系の構築を行った。発現用宿主としては大腸菌BL21(DE3)株、BL21-CodonPlus(DE3)-RIL株、ArcticExpress(DE3) RIL株などを検討した。MCMについてはいくつかのベクター/宿主の組合せで高発現を行うことが出来たが、大部分が不溶性の封入体を形成し、可溶性画分に存在するMCMはわずかであった。MMAAについては発現量は少ないものの可溶性画分に存在していた。発現した蛋白質の精製を行い、MCMおよびMMAAの機能解析を行った。得られる精製蛋白質の量が少なく詳細は未解明であるが、MCMホロ酵素の不活性化や、MMAAがGTP存在下でMCMを再活性化することが示唆された。MCMを含む補酵素B12関与酵素はラジカル機構で反応を触媒するが、補酵素の修飾を伴うホロ酵素の不活性化を受けやすく、我々はこれまでにいくつかの補酵素B12関与酵素について再活性化系を明らかにしてきた。MMAAがMCMの再活性化因子であることを明らか出来れば、動物における補酵素B12関与酵素の再活性化系の初めての例であり、またMMAAの変異によるメチルマロン酸尿症の治療法の開発に役立つことも期待される。 2.補酵素B12関与エタノールアミンアンモニアリアーゼ(EAL)とその再活性化因子(EALR)がATP存在下で複合体を形成することを確認した。 3.Klebsiella oxytocaが有する3種類のB12アデノシル化酵素(CobA,PduOおよびEutT)について単独での活性と補酵素B12関与ジオールデヒドラターゼ(DD)共存下での活性などを調べ、PduOがよりDDの系に特化していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現状ではMCMおよびMMAAの精製蛋白質がわずかしか得られておらず、詳細までは明らかに出来ていないものの、当初の予想通りMMAAがMCMを再活性化することを示唆する結果を得ることが出来た。また、EALとEALRがATP存在下で複合体を形成することを示すことが出来た。さらに、Klebsiella oxytocaが有するCobA,PduOおよびEutTの各B12アデノシル化酵素が特定の系に特化している可能性を示唆する結果も得られている。これらについての詳細の解明はこれからであるが、概ね予想通りの結果が得られていることから、補酵素B12関与ラジカル酵素の活性維持システムについての共通原理や差異を明らかにするという当初の目的を残りの2年で達成することは十分可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.MCMの可溶性画分への発現量を改善する方法として、チオレドキシンなどの高溶解性蛋白質との融合蛋白質として発現させる方法や培地にビタミンB12を添加することでMCMをホロ酵素として発現させる方法を検討する。また、MMAAについては別のベクターや宿主を検討し、発現量の向上を検討する。その上で、当初の計画通り、MMAAがMCMの再活性化能を有することをより明らかな形で示し、どのような機構で再活性化が行われるのかを調べる。具体的には、ゲル濾過クロマトグラフィーや非変性ポリアクリルアミドゲルゲル電気泳動などを用いてMCM-MMAA複合体の形成やGTPやGDPの効果を検討する。さらに不活性化されたMCMのMMAAによるアポ化の有無などを調べ、MMAAによるMCMの再活性化機構を明らかにする。さらに、cblA型メチルマロン酸尿症の患者に見られる変異型MMAAについても同様に機能解析を行い、変異が機能にどのように影響するのかを明らかにする。 2.精製EALおよびEALRを用いて、EAL-EALR複合体の形成とEALの再活性化やアポ化の関連、さらにそれらに対するATPやADPの効果を調べることで、EALRによるEALの再活性化機構を明らかにする。また、EALRの立体構造解析を行い、再活性化の分子機構を明らかにする。 3.PduOとDD、EutTとEALなどの組合せで、B12アデノシル化酵素とB12補酵素関与酵素の相互作用の有無を調べ、どのようにして各アデノシル化酵素が特定の酵素系に特化しているのかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では、低温での蛋白質発現を大きなスケール行うために平成24年度経費にて冷却機能付きの恒温振盪培養装置の購入を計画していたが、研究の進捗状況および設置場所の確保の関係で購入を延期し、その結果平成24年度経費に残額が生じた。当初予定した恒温振盪培養装置は今後も設置スペースの確保が困難であるので、すでに研究室にある中型低温インキュベーター内に設置可能な振盪機を購入することで、これに代えることを計画している。
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