研究実績の概要 |
V-ATPase回転モーターを構成する回転子複合体(NtpKリング、NtpC, NtpD, NtpGサブユニット)及び固定子複合体(NtpA, NtpB, NtpE, NtpG, NtpIサブユニット)の形成に関わるサブユニット間相互作用の中で、NtpKリングとNtpCとの相互作用を解析する上で重要なNtpK E139D変異体に対するNtpK分子内抑圧変異の単離に成功した。単離した変異体の中には、NtpKの1、2番目の膜貫通部位間ループに存在するE50残基、イオン結合部位であるE139に隣接するV138残基が含まれていた。E50K/E139D変異株ではNa+依存性ATP加水分解活性が野生型の70%程度に回復し、一方V138I/E139Dは野生型と比較して約1.3倍の高いATP加水分解活性を示した。いずれの抑圧変異株においてもNa+排出活性の回復は部分的であり、ATP加水分解活性とNa+排出活性とが一致せず、これらの残基は、イオン結合部位に対する構造変化を伴って、V1部分におけるATP加水分解とV0部分におけるイオン輸送とのエネルギー共役に作用することがわかった。固定子としてイオン通路を形成するNtpIサブユニットの構造解明は、本酵素のメカニズムの解明に必須であり、そのX線結晶構造解析を進めるために、その結晶化条件を検討した。NtpIサブユニットのC末端にTEV プロテアーゼ部位、さらにRFP、His-tagを付加した融合タンパク質を作成し、出芽酵母で大量発現に成功した。Ni2+アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーによる精製過程の検討から、NtpIの安定性、すなわち結晶化の最適化に界面活性剤の種類が極めて重要であることがわかった。
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