• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

腸管における架橋酵素を介したシグナル伝達制御と腸内細菌との共生成立の分子機構

研究課題

研究課題/領域番号 24570164
研究機関九州大学

研究代表者

川畑 俊一郎  九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90183037)

キーワードトランスグルタミナーゼ / 腸内細菌 / ペプチドグリカン / 情報伝達経路 / 転写因子 / 抗菌ペプチド
研究概要

腸内の常在細菌は宿主の免疫反応から免れて増殖し、腸管の恒常性に寄与するとともに各種栄養源の供給を行っている。しかし、病原細菌の細胞壁成分であるペプチドグリカン(PGN)と常在細菌のPGNを識別する分子機構は不明である。トランスグルタミナーゼ(TG)は、グルタミン残基とリジン残基の側鎖同士を架橋する架橋酵素である。ハエにおいては、TGをRNAiによりノックダウンすると、外皮の異常を誘導するとともに、生存率が著しく低下することが判明した。本研究では、TGによる腸管上皮の情報伝達制御、および宿主と腸内細菌との共生成立の分子機構を解明することを目的とする。TG-RNAiにより、通常飼育した非滅菌ハエの生存率が有意に減少したが、滅菌ハエにおいては、TG-RNAiによる生存率低下は観察されなかった。一方、腸管のPGN受容体を介した情報伝達経路であるIMD経路の抗菌ペプチド産生は、TG-RNAiした非滅菌ハエにおいて著しく亢進していた。さらに、TG-RNAiした非滅菌ハエの腸管抽出物を、野生型の滅菌ハエに経口投与すると、生存率の低下を引き起こした。また、非滅菌ハエにTG-RNAiを行うと、腸管上皮細胞のアポトーシスの原因となり、IMD経路のNF-κB様転写因子であるRelishの核移行を誘導することが判明した。TGの架橋反応を阻害する試薬を非滅菌ハエに経口投与すると、腸管上皮細胞のRelishの核移行が促進され、結果的に抗菌ペプチド産生が増強された。以上のことから、TGがIMD経路の転写因子Relishを架橋して不活性化させ、常在細菌に対する過剰な免疫応答を抑制することで、腸管免疫の恒常性維持に寄与していると結論した。本研究成果は、2013年7月23日付けのScience Signaling誌に掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

TGによる転写制御の標的となる転写因子を同定でき、複雑な情報伝達経路の制御機構に一旦を解明できた。また、その成果を一流雑誌であるScience Signalingに掲載することがきた。

今後の研究の推進方策

これまで宿主の抗菌ペプチド産生は、定量PCRによるmRNA量で判断され、産生された抗菌ペプチドのタンパク質の定量測定はなされていない。本研究では、タンデム四重極型質量分析計を用いて、腸管に分泌された抗菌ペプチドのタンパク質量を決定するとともに、dTGのRNAi前後における共生細菌の同定、共生細菌を単一で定着させたノトバイオートハエを用いた生存率の解析、合成抗菌ペプチドを用いた共生細菌に対する抗菌活性の測定などを行って、宿主の免疫応答制御を介した腸内細菌の共生成立の分子機構を解明したい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Transglutaminase-catalyzed protein-protein cross-linking suppresses the activity of the NF-κB-like transcription factor Relish.2013

    • 著者名/発表者名
      Shibata, T., Sekihara, S., Fujikawa, T., Miyaji, R., Maki, K., Ishihara, T., Koshiba, T., and Kawabata, S.
    • 雑誌名

      Science Signaling

      巻: 6, ra61 ページ: 1-10

    • DOI

      10.1126/scisignal.2003970

    • 査読あり
  • [学会発表] 腸内細菌により誘導されるIMD経路を介したシグナル伝達制御.

    • 著者名/発表者名
      川畑俊一郎
    • 学会等名
      日本細菌学会
    • 発表場所
      幕張国際会議場
    • 招待講演
  • [学会発表] 腸管における架橋酵素による情報伝達制御と腸内細菌との共生成立の分子機構.

    • 著者名/発表者名
      川畑俊一郎
    • 学会等名
      日本応用酵素協会
    • 発表場所
      ホテル阪急インターナショナル
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi