研究課題/領域番号 |
24570165
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野村 一也 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30150395)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | GPIアンカー / 線虫 / 生殖幹細胞 / 卵母細胞 / 減数分裂 / 幹細胞ニッチ |
研究概要 |
GPI anchor型蛋白質合成の意義を明らかにするため、線虫C. elegansを用いて合成関連遺伝子のノックアウト、ノックダウンを行った。GPI anchor合成が線虫の生殖細胞ニッチの維持に不可欠であるという発見を論文として発表し、次にどのGPIアンカー型蛋白質が幹細胞ニッチの維持と形成に機能を果たしているかを明らかにする研究を行った。GPIアンカー合成の第一段階をになう酵素PIGA-1のノックアウト株は、胚細胞が形成されず子孫を残すことができない。このノックアウト株を野生型のpiga-1遺伝子の導入でレスキューすると生殖系列の異常は解消される。さらに線虫の生殖巣の端に存在する体細胞(distal tip cell:DTC)でだけノックアウト株に野生型piga-1遺伝子を発現させても、やはり完全に生殖巣異常が解消される。この実験でDTCで合成されるGPIアンカー型蛋白質が、生殖巣へと移動して幹細胞ニッチや卵母細胞の形成に働くことを確認した。DTCで合成されるGPIアンカー型蛋白質をTriton X114とPhosphatidylinositol 特異的phospholipase C(PI-PLC)の処理で精製して質量分析で多数同定し、その全てについて野生型線虫でRNAiを行い、RNAiで生殖巣での異常をひきおこす遺伝子を同定する実験を行った。より感度のよいGPIアンカー型蛋白質の検出のため、GPIアンカー型蛋白質を特異的に結合するαトキシンによるGPIアンカー型蛋白質の濃縮をレスキュー株、野生型株について行い、Triton X114とPIーPLCでの精製後の質量分析による同定を現在実施している。更にバイオインフォマティクスで線虫ゲノム中からGPIアンカー型蛋白質候補を選びだし、その全てについてRNAiを行うという実験も、現在候補の半数以上について終了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
RNAiによる生殖幹細胞ニッチの形成と維持に関わる遺伝子の同定実験は予想以上に順調に進んでいる。またαトキシンによるGPIアンカー型蛋白質の濃縮実験は、国際共同研究として実施しておりαトキシンの扱いに最も長けた研究者の意欲的な貢献で順調に進展している。これらの成果は2013年の国際学会で口頭発表することになっている。また生殖巣の異常を検出するための技術的改良にも成功しており、より高感度で異常を検出できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
幹細胞ニッチの維持と形成に不可欠なGPIアンカー型蛋白質を同定する。このために、 1)バイオインフォマティクスによって選び出した全GPIアンカー遺伝子候補についてのRNAi実験の継続した実施とその完了をめざす。 2)αトキシンで濃縮した、DTCで合成される幹細胞ニッチに必須なGPIアンカー蛋白質候補の同定と、同定した各遺伝子の個別のノックダウン、あるいはノックアウト株による表現型の検討を通じて、幹細胞ニッチの維持と形成に不可欠な遺伝子を同定する。 3)生殖幹細胞ニッチの形成に不可欠なすでに知られている遺伝子lag-2, glp-1などのNotch信号伝達系の遺伝子と、GPIアンカー型蛋白質の遺伝子との相互作用を解明する。これにともなって幹細胞一般への研究成果の拡張を目指した研究の展開をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
網羅的RNAiやプロテオーム解析、遺伝子組換え実験のためのテクニカルスタッフの雇用を行う。 また、プロテオーム解析、遺伝子組換え実験、RNAiやノックアウト株の取得などの生化学実験、分子生物学実験の費用にあてるほか、研究成果を国際学会で発表するための旅費、研究成果の発表のための英文校閲費用や投稿料などに充当したい。またマイクロアレイ解析のためのソフトウエアの維持費や研究に用いている顕微鏡など機械設備の維持修理費用にも発生した場合充当したい。
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