研究課題/領域番号 |
24570167
|
研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
亀高 諭 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (10303950)
|
キーワード | ライソゾーム / リポフスチン / ライソゾーム関連オルガネラ / クラスリン / サポシン |
研究概要 |
本年度においては、LROの形成機序を明らかにする上で重要なライソゾーム酵素群のソーティング機構について、S2培養細胞系を用いた解析を行った。哺乳動物におけるマンノース6-リン酸(M6P)受容体はゴルジ体においてM6P修飾を受けたライソゾーム酵素群に結合し、ゴルジ体からライソゾームへの選別輸送に与ることが知られている。ショウジョウバエにおけるM6P受容体はLerpとして知られる一型膜貫通蛋白質であるが、Lerpのリガンドになる分子はこれまでほとんど知られていなかった。Lerpリガンドを網羅的に解析する目的でLerp遺伝子に対するヘアピンベクター(shRNAベクター)を構築し、このベクターを恒常的に発現するS2細胞クローンを取得したところ、Lerpの発現が顕著に低下した株を取得することに成功した。さらにこのクローンの培養上清中に分泌される蛋白質を様々な糖鎖に対するレクチンを用いたレクチンブロットにより、Lerp発現抑制により糖鎖修飾を受けた蛋白質の培地中への分泌が増加することが明らかとなった。これらの糖蛋白質を質量分析により解析した結果、哺乳動物ではライソゾームに局在し、スフィンゴ脂質などの糖脂質代謝に関わる分子、Saposinに高い相同性をしめすSapr(Saposin-related)が同定された。Saprをクローニングし、GFP型でS2細胞に発現させたところ、Sapr-GFPは主にLamp1陽性のライソゾームに局在し、試験管内結合実験によりLerpの内腔側領域とSapr-GFPが直接的に結合することが示されたことから、LerpがSaprのソーティング受容体として機能していることが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでにクラスリンアダプターであるAP1複合体を欠失したショウジョウバエにおいて、ライソゾーム関連オルガネラの異常蓄積が起こることを見出してきた。この現象に関わる新規因子をRNAiスクリーニングにより個体レベルで探索した結果、ライソゾーム酵素群のトランスゴルジ網(TGN)におけるソーティング機構に関わる分子が候補分子として得られたため、これらの分子の機能をアッセイするためのS2細胞系を用いたシステム構築を行ったこと、更に年度末に別の研究機関への異動があったこともあり、当初の予定寄りも少し遅延が生じた。しかしながら、新規分子の発見があったことから研究計画全体としては今後予想外の大きな進展が見込まれる。
|
今後の研究の推進方策 |
AP-1欠失によりハエ個体の複眼にみられるLRO蓄積という表現型と、AP-1により制御されるソーティングレセプター、Lerpの欠失による表現型を比較することで、これら、ゴルジ体局在型のクラスリンアダプターとソーティングレセプターの生理機能をより詳細に明らかにする。特に、複眼においては、ラブドメアに分布する分子を用いた蛍光ライブマーカーを作製し、これにより、表現型を記述することにより、LRO形成におけるこれら分子群の役割を明らかにできると考えられる。 すでにLerpの欠損ショウジョウバエを手に入れ、いくつかの新たな表現型を見出している。これらは当初の予定外の成果であるが、様々な病態にこれらの分子群が関わることを示すことができる点に置いて重要で、本研究課題の一部として取り組む予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
年度末での異動に伴い3月末の学会参加が予定よりも短くなったため。 これまでに予想を超えた成果が得られているため、更に多くの学会発表及び業績発表が見込まれるのでその経費として使用する。
|