研究課題
デング(DENV)・日本脳炎(JEV)ウイルス感染に直接・間接的に関わる機能糖鎖を改変するプローブを化学合成あるいは天然資源から探索・分子最適化して用いることで、ウイルスの感染細胞内におけるウイルス増殖機構および病態形成機構を解明するとともに、両ウイルス感染症制御に有用な物質的基盤を構築することを目的として研究を実施した。最終年度では、計算科学的アプローチにより糖鎖機能制御プローブの更なる構造最適化を進め、プローブ分子によるウイルス表面タンパク質の構造変化が抑制される可能性を示した。さらに、JEV神経弱毒性株と強毒性株のコンドロイチン硫酸E(CSE)に対する結合性の違いについて検討を行い、ウイルスEタンパク質上の123番のアミノ酸が、Ser(Mie-41株)→Arg(Beijing-1株)への1アミノ酸置換することにより脳神経系に存在するCSEとの結合性が上昇し、神経細胞への感染効率が上昇する可能性を示した。本課題研究を通して、(1)細胞内糖脂質がウイルス粒子の成熟に関与する新たなウイルス感染機構、(2)高い抗デングウイルス活性を示す食用キノコ同定、(3)NS1タンパク質糖鎖末端シアル酸構造の同定とシアル酸依存的細胞内ウイルス粒子取込機構、(4)糖合成化学およびコンピュータ科学連携による新規DENV細胞内侵入阻害剤創出、(5)遺伝子改変マウスを用いたウイルス感染に関わるCSE機能解明、(6)計算科学的アプローチによる侵入阻害剤構造最適化、(7)JEVの神経組織指向性・病原性へのCSEの関与などについて成果を挙げた。本研究による成果は、感染過程におけるウイルス-宿主因子間相互作用、特にウイルス膜―宿主細胞膜間融合機構、ならびに病態形成機構の解明に貢献した。さらに抗デングウイルス剤リード化合物となることが期待される感染症制御プローブ分子が創出された。
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