研究課題/領域番号 |
24570169
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
伊左治 知弥 東北薬科大学, 薬学部, 助教 (80433514)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インテグリン / 超分子複合体 / 糖鎖 |
研究概要 |
本研究では以下3点にフォーカスを絞り研究をしている。①インテグリンを中心とした複合体の形成に糖鎖はどのように関与しているか。②インテグリン上に付加された糖鎖を介した複合体形成の特異性。③糖鎖を介した複合体の形成は、インテグリンの増殖・分化シグナルにどのような影響を与えるか。 インテグリンの複合体の観点から本年度は糖鎖に特異的に結合する分子を同定するために、分泌型の糖鎖欠損インテグリンおよび野生型インテグリンを培養上精から回収し、生化学的手法を用いることで、十分量精製することができた。今後、精製できたタンパク質を樹脂に結合させて、様々な癌細胞や正常細胞の細胞抽出液から特異的に結合する分子の同定を次年度に行う予定である。 糖鎖欠損変異により、細胞増殖が変化していることを申請者らは明らかにしているが、増殖・浸潤シグナルの観点から解析し、細胞周期を調節するp27が糖鎖野生型の細胞では上昇していたが、糖鎖変異体では低下しており細胞周期シグナルの関与が示唆された。 複合体の特異性について、HeLa細胞やMDAMB231の培養細胞でGOLPH3をノックダウンすることでインテグリン依存的な細胞の浸潤が低下すること、非常におもしろいことにシアリル化糖鎖が特異的に低下することをレクチン沈降、HPLC解析やMS解析で、またこの細胞浸潤はシアル酸転移酵素の過剰発現で部分的に回復することを明らかにした。今後糖転移酵素に対する特異性やin vivoでの糖鎖の関与を明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・糖鎖や複合体形成のシグナルへの影響については進展しているといえる。一方でインテグリンの糖鎖を中心とした複合体の解明という観点からはもう少し努力が必要だと考えられる。今年度はタンパク質精製などのトラブルで順調に進めることができなかった。精製の系に関しては本年度に確立したため、次年度以降、糖鎖変異体を用いることでマイクロドメインや癌細胞特異的に観察されるインテグリン複合体形成を明らかにしてゆきたい。
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今後の研究の推進方策 |
細胞表面に存在する複合体形成のメカニズムの解明を推進してゆく。具体的には以下の4点が上げられる。①前年度に野生型および糖鎖欠損型インテグリンを精製した。十分量比較的簡便に精製できることが分かったので、複合型糖鎖を持つ、癌細胞から同様に精製したインテグリンを用意する。②様々な癌細胞の抽出液、あるいは培養上精をあつめ、癌細胞で特異的に糖鎖に結合する分子を同定してゆく。③EGFRやガレクチンなど元来相互作用が注目されている分子に対して化学修飾できるクロスリンカーを用いて相互作用や糖鎖に対する特異性に関して検討をする予定である。④in vivoにおける糖鎖複合体の重要性を明らかにするためSCIDマウスに糖鎖変異体の癌細胞を移植する実験も計画している。 ①、②から特異的に結合する分子が新規に同定される予定である。③、④から糖鎖の特異性やin vivoにおける重要性が更に深まると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はタンパク精製用に生化学実験用試薬および癌細胞の培養に細胞培養試薬、実験動物の購入が必要であると考えられる。さらに、新しい知見を論文発表や学会発表のための費用を計画している。
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