研究課題/領域番号 |
24570169
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
伊左治 知弥 東北薬科大学, 薬学部, 助教 (80433514)
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キーワード | 糖鎖 / 超分子複合体 / 接着 |
研究概要 |
本研究では①インテグリンを中心とする分子複合体の形成に糖鎖はどのように関与しているか②インテグリン上に付加された糖鎖を介した複合体の形成に特異性はあるのか③糖鎖を介したこの複合体の形成は増殖・分化維持・接着シグナルに影響を与えるのか、3点にフォーカスを絞り研究を行っている。前年度の検討から糖鎖変異インテグリンが発現した細胞では細胞増殖シグナルAKT、ERKのリン酸化が亢進し、一方で細胞周期にかかわるp27が低下していたため、本年度はこれらのシグナル分子の変化や細胞増殖の変化が糖鎖特異的であるかどうかをおもに検討した。糖鎖変異体と野生型インテグリンα5はN-型糖鎖の本数が11本の差がある。糖鎖が欠損した糖鎖変異体に糖鎖付加部位を再導入したレスキュー変異体を作成し、どの付加部位に付加された糖鎖がシグナルの変化や複合体の維持にかかわるのかをスクリーニングした。興味深いことに野生型で認められ、糖鎖変異型で低下するEGFRとの分子複合体の形成は、細胞膜付近の一部の糖鎖を再導入した糖鎖変異体で回復することがわかり、特定の糖鎖付加部位のN-型糖鎖が特異的に複合体の形成にかかわることが示唆された。さらに、この特定の付加部位の糖鎖を再導入した変異体を細胞に発現させると細胞増殖やそれに付随するAKT、ERKなどのシグナルレベルが野生型と同等になった。複合体形成に関してインテグリンの糖鎖を特異的に制御するGOLPH3がPI4Pとの複合体が重要であることが新たに分かった。今後、複合体を形成する他の分子やマイクロドメイン、in vivoにおける糖鎖の関与をさらに明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インテグリンの一部のN-型糖鎖が複合体形成にかかわることが明らかになってきており、その特異性の面でインテグリンというモデル分における複合体形成のメカニズムの解明が本年度は大きく前進したと考えられる。また、インテグリンの糖鎖複合体を制御する分子に関してPI4Pとの関連がわかった。次年度以降マイクロドメインの周辺やさらに新規の分子の同定を進めてゆく。
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今後の研究の推進方策 |
α5インテグリンは癌細胞で促進的に働く場合と抑制的に働く場合があり、研究者によっても見解が分かれている。我々が同定した特異的な分子複合体の形成がin vivoにおけるこれらの振る舞いの違いに関連があるか今後推進してゆく。マイクロドメインの違いが分子複合体のこれらの違いを引き起こすのではないかと考えられるので、ショ糖密度勾配法やレーザー顕微鏡を用いた検討を行う予定である。またモデル分子であるインテグリンα5の糖鎖と結合する分子に関しても新たに同定してゆく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
効率的に研究を進めることができたために次年度使用額が生じたと考えられる。来年度も効率的に研究を進めてゆく。 本年度は実験動物の購入や引き続き細胞培養・生化学一般試薬の購入が必要である。さらに新しい知見を論文発表するために支出を計画している。
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