研究課題
本研究では、渋味感覚の分子機構解明に向け「味覚神経上ではTRPA1とTRPV1が緑茶カテキン(EGCG)を感じる渋味センサーであり、それらが活性化されることが渋味感覚を導いている。」という仮説を立て研究を進めた。結果、以下の事が明らかになった。(1) TRPA1とTRPV1は、調製後時間経過し酸化したEGCGで活性化される。TRPV1はTRPA1より酸化EGCG感受性が高い。TRPA1とTRPV1を発現する培養感覚神経は、酸化EGCGにより活性化される。(2)溶解直後のEGCGではなく酸化EGCGがTRPチャネルを活性化する。HPLCとLC-MS解析より、酸化EGCG溶液中に、生理活性の高いEGCGの二量体Theasinensin A/D(TS-A/D)が存在した。精製TS-AがTRPA1とTRPV1を活性化することが判明し、TS-Aが緑茶の渋味物質の一つである事が明らかになった。実際の培養感覚神経が、TS-Aにより活性化され、その応答においてTRPV1とTRPA1の相互作用が関与している事が明らかになった。(3) 酸化EGCG・TS-AによりTRPV1とTRPA1チャネルが実際に活性化されることをパッチクランプ法により電気生理学的に確認され、更に高濃度では抑制が検出された。(4)TRPV1は鳥類から、TRPA1は哺乳類から酸化EGCG反応性を示すことが明らかになった。両TRPの動物種による応答性の違いから酸化EGCG感受性部位の探索が可能になり、どちらのTRPチャネルも6回膜貫通部位に感受性部位が存在することが判明した。渋味感覚の解明に向け、これらの研究成果の貢献は非常に大きい(主要発表論文は、国際誌Chem sensesの2015年度の第1巻の表紙に採用され、ハイライト論文に選定された)。
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Chem. Senses
巻: 40 ページ: 27-46
10.1093/chemse/bju057