研究課題/領域番号 |
24570176
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木下 賢吾 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60332293)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遺伝子共発現 / タンパク質間相互作用 / 相互作用ネットワーク / 統合ネットワーク |
研究概要 |
本研究計画の本年度の計画は、大きく分けて共発現データの解析の部分とタンパク質間相互作用ネットワークの解析を行っている。 共発現データの解析に関しては、空間情報として、組織の違いに着目して解析を行った。まず、ことなる条件下での共発現パターンがどれぐらい似ているかを定量化するために、共発現パターンの比較法の開発を行った。次に、異なる種や組織での発現パターンを比較することで、保存している遺伝子群を見いだす手法へと発展させた。手法に関しては、生命医科学情報学連合大会で口頭発表に選ばれ、ポスター賞を受賞するなど、手法の独自性が高く評価されている。現在、論文としてまとめているところである。また、ヒトをターゲットとして、これまで使っていたのとは別のプラットフォーム(Affymetrix Human Gene 1.0 ST Array)での共発現データ(6865サンプル)をArrayExpressから取得し、mas5, RMAでの規格化等の比較を行い、精度の見積を行った。 タンパク質間相互作用ネットワークの解析に関しては、タンパク質間相互作用ネットワークから機能モジュールを探すために、新規にクラスタリング手法の開発をおこなった。具体的には、これまではクリークと呼ばれる全てのノードが互いにエッジを持っている部分グラフを効率的に探す手法はあったが、クリークという条件は生物学的には厳しすぎることが問題であった。そこで我々は、PageRankと呼ばれるノードの重み付けに着目して、小さな部分グラフから大きな部分グラフを構成するアプローチで、クリークに近いを効率的に検出する手法の開発を行った。結果として、従来手法よりもより機能的に関連性の深い卵白室群を見いだすことができた。この手法をネットワーク解析の標準的なプログラムであるCytoscapeで利用できるような実装を行い、現在論文を投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共発現データの解析の部分には関しては特に順調に進んでおり、新規に異なるデータセット間での比較法の開発を行う事ができた。また、これを利用して組織のデータと前データを比較する事で、組織データとしての空間情報を抽出する事ができた。最初の計画では主成分分析を利用した多次元化を試みたが、シロイヌナズナの場合とは異なり、主成分の意味が不明瞭だったのと、多くの癌サンプルの影響でアプローチを若干変えたが、今後は、これらの組織データと全体のデータとを統合して多次元の共発現指標としてまとめていく予定である。アプローチは変わったが、本質的に複数のデータを利用して共発現度を多次元化することができたので問題はないと考えている。また、副産物としての共発現の比較法を開発することができたので、種間比較も行う事ができ、共発現の信頼度指標として発展させることもできた。 タンパク質間相互作用ネットワークの解析に関しては、新規のクラスタリング手法が非常に高速且つ柔軟な方法として完成した。また、この方法は小さなクラスターから大きなクラスターにまとめる方法なので、クラスターの階層構造を考える事ができるので、多次元共発現指標との相性もよい方法であり、予想以上に良い解析手法を考案することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ここまで概ね順調に推移しているので、今後はネットワークの拡充を進めていく。この際、これまで行ってきたタンパク質複合体の構造解析と予測の知見を併せて利用することも検討している。また、前年度に開発を開始した、特徴的なネットワーク構造の検出法(クラスタリング)の改良を、大規模統合ネットワークへの適用をすすめ、出てきたネットワーク構造の機能的・生物学的な意味の解釈をすすめる。最終的には、この時空間情報を含んだ統合ネットワークをインターネットを通じて公開するように、webインターフェースの開発も行う。また、これらの情報をマウスへマッピングすることで、実験で検証することができる遺伝子のリストアップを進め方法の確度の検証を行えるようにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は基本的には全部一人で行うが、結果の解析と生物学的な意味づけでは、以前の特定研究で知り合った医学系研究者の協力を仰ぐ。また、大規模ネットワークを構築する際に必要なフィルタリング手法の開発にあたっては、ドッキング手法の応用を考えているが、ドッキング手法音開発を共同で行った中村春木教授(阪大蛋白質研)やHitPredictの開発者であるAshwini(東大医科研)とは意見交換を行っていく必要があると考えている。そのための打ち合わせ旅費などが必要である。 また、本研究課題はデータ収集など作業的な段階がいくつかあるが、その過程では大学院学生のバイトを雇用することも予定している。 大きな備品等の購入の計画はなく、現有機器へのDisk追加等で対応しつつ、ヒトゲノム解析センターの計算機インフラ(有料)を活用していく予定である。
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