研究課題/領域番号 |
24570176
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木下 賢吾 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60332293)
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キーワード | 相互作用ネットワーク / タンパク質間相互作用 / 遺伝子共発現ネットワーク / ネットワーククラスタリング |
研究概要 |
本研究計画の本年度の計画は、大きく分けて共発現データの解析の部分とタンパク質間相互作用ネットワークの解析を行っている。 共発現データの解析に関しては、従来はマイクロアレイデータを利用した共発現解析を行ってきたが、近年、RNA-seqによる発現量情報が増えてきたことを受けて、RNA-seqでの共発現の利用を開始した。具体的には、ヒト(11816サンプル)、マウス(9518サンプル)、ショウジョウバエ(1920サンプル)のRNA-seqのデータを利用して共発現ネットワークの構築を行った。大規模なRNA-seqデータを多サンプルに関して処理するために、発現量の推定に関して新たな手法の開発も行った。サンプル収集過程の途中経過であるが、ヒトサンプル(5626サンプル)を利用して、アレイ(73,083サンプル)の時と同様に機能予測を指標として性能を評価したところ、ヒトに関してはマイクロアレイで2.60であったpartial AUC(/10,000)が、RNA-seqでは2.84に向上するなど、大幅な性能向上をすることができた。結果は夏までにCOXPRESdbの一部として公開予定である。 タンパク質間相互作用ネットワークの解析に関しては、昨年度開発を行った独自の検出方を利用して、共発現ネットワークとタンパク質間相互作用ネットワークに関して、機能モジュールの探索を行っている。このモジュール探索法は、従来法で問題であった生物学的には厳しすぎるクリークという条件を弱めた手法であると同時に、モジュールの階層性を検出できる方法へと拡張を行う事ができた。この手法はネットワーク解析の標準的なプログラムであるCytoscapeで利用できるような実装を行い、公開を行った。手法に関する論文は、性能評価も含めて現在投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、大きなデータを扱うため困難かと思われたが、RNA-seqの解析の流れを再度検討できたことで、RNA-seqを利用した遺伝子共発現ネットワークの高精度化を達成することが出来た点が大きい。また、機能モジュールの同定法に関して、論文化が遅れてはいるが、精度評価をより厳密に行うことで見えてきた問題点も概ねクリア出来たので、全体として順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
各階層のネットワークの構築が順調に進んだので、次年度は共発現ネットワークとタンパク質間相互作用ネットワークの統合を行い、統合されたネットワークを利用して機能モジュールの同定を進め、生物学的に解釈可能なモジュールに関しては、データベース化を行い、実験での検証も進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文の受理が予定より遅れているのと、データの利用形態を工夫することで計算機利用料を圧縮できたため。 論文は現在査読中の状態で、夏頃までには受理されると期待している。また、当初計画では次の目標だととらえていたRNA-seqのデータ蓄積が予定より進んでいるため、本年度は前年度分の計算機利用量分を利用する形になる予定である。
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