研究課題/領域番号 |
24570178
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
和沢 鉄一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教育研究支援者 (80359851)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水和 / 蛍光偏光解消法 / 周波数領域蛍光法 / 回転相関時間 / 蛍光寿命 / アクトミオシン / キネティクス |
研究概要 |
本研究は,タンパク質の動作や酵素反応に伴って起こるタンパク質周囲の水和層の変化を局所粘性の経時変化として計測する手法の確立を目的とする.タンパク質の水和層の局所粘性変化は,タンパク質に係留させた蛍光プローブ回転運動性から検出できる.蛍光プローブの回転運動性の経時変化は,周波数領域蛍光偏光測定法を用いることで測定できると期待される.そこで,本年度は,水溶液中で自由な回転ブラウン運動を行う蛍光プローブの回転相関時間測定が可能な測定系の構築を行った. 本年度構築した周波数領域蛍光偏光測定系では,CWレーザー光を光導波路型LN光変調器で変調した光を励起光として用い,蛍光試料から発生した変調蛍光を光電子増倍管で検出し,その出力をロックインアンプに掛けて位相検波検出を行い,変調蛍光の振幅と位相を読み出した.この測定系により,200 MHzまでの変調周波数で周波数領域蛍光測定が可能になった. 測定系の性能評価のため,Cy3, Rhodamine 6G(R6G)を蛍光試料として測定を行った.水中のCy3, R6Gの蛍光寿命はそれぞれ0.251±0.005,3.91±0.01 nsecとして測定され,回転相関時間は,0.444±0.032,0.223±0.004 nsecと測定された(20℃).さらに,1~100 mPa・sの粘性範囲において,プローブの回転相関時間の溶媒粘性に対する比例性も確認できた.このように,蛍光プローブのサブナノ秒の蛍光寿命と回転相関時間を再現性良く測定することに成功した. 今後,本測定システムを経時変化計測できるように拡張し,蛍光プローブの蛍光寿命や回転相関時間の経時変化測定に展開する予定である.また,本研究で開発したシンプルな測定装置の構成でサブナノ秒の蛍光寿命と回転相関時間測定を達成できたことは,時間分解蛍光法の生物分子科学への応用という点でも重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書において計画した24年度の実施項目は,(1)周波数領域蛍光偏光測定系の構築と,(2) 構築した蛍光測定システムの較正と評価である. 本年度は,周波数領域蛍光偏光測定系の構築を行った.この装置においては,CWレーザー光を光導波路型LN光変調器で変調した光を励起光として用い,蛍光試料から発生した変調蛍光を光電子増倍管で検出し,その出力をロックインアンプに掛けて位相検波検出を行い,変調蛍光の振幅と位相を読み出した.この測定系により,200 MHzまでの変調周波数で周波数領域蛍光測定を実現した. また,Cy3, Rhodamine 6G(R6G)を蛍光試料として,構築した蛍光測定システムの評価を行った.水中のCy3, R6Gの蛍光寿命はそれぞれ0.251±0.005,3.91±0.01 nsecとして測定され,回転相関時間は,0.444±0.032,0.223±0.004 nsecと測定された(20℃).これらが文献値とほぼ一致することから,蛍光寿命と回転相関時間測定においてサブナノ秒の分解能を達成できたことを確認した.また,1~100 mPa・sの粘性範囲において,回転相関時間の溶媒粘性に対する比例性も確認できたことより,本装置から得られる回転相関時間の測定値の信頼性が確認された. このように,交付申請書において計画した研究目的を達成することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究実施計画の主たる項目は,(1)データ解析法の開発,(2)周波数領域蛍光偏光測定装置の経時変化測定への拡張,そして(3)アクチン,ミオシンに結合した蛍光プローブの回転相関時間計測である. データ解析法の開発においては,2位相ロックインアンプの特性を利用し,その出力を極座標系を利用したデータ処理法により,変調振幅と変調位相角を算出するアルゴリズムを確立する.さらに,時間分解蛍光データの解析として,1~3個の指数関数減衰の線形結合を蛍光減衰および蛍光異方性減衰の解析モデルとして使用し,最小自乗法で測定データにフィットすることによって,蛍光寿命や回転相関時間のパラメータを算出する. 周波数領域蛍光偏光測定装置を経時変化測定への拡張においては,本研究で開発する周波数領域蛍光偏光測定装置にストップトフローを導入する.TTLのトリガー信号を使って,ストップトフロー側と蛍光測定系側を連携させることにより,試料からの変調蛍光変化のキネティクス測定を実現する. さらに,アクチンやミオシンに蛍光プローブを係留し,その回転相関時間を本研究で開発する周波数領域蛍光偏光測定装置で測定する.ミオシンを用いた実験系においては,ATP加水分解反応やアクチン結合に伴うミオシン周囲の水和層局所粘性の変化を調べる.アクチンについては,アクチン重合反応に伴う局所粘性変化やミオシンとの相互作用による局所粘性変化を調べる.これにより,アクチンやミオシンの動作や反応に伴う水和層の変化を明らかにしていきたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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