研究概要 |
本研究は、プリオン構造変換を制御しうる広範囲な化合物群を用いてプリオン蛋白質(PrP)の構造変換に重要な揺らぎを同定すること、さらにPrP以外の蛋白質へも対象を広げることにより、揺らぎにより出現する準安定状態の存在と蛋白質機能発現の関係の解明、低分子化合物による蛋白質の揺らぎの制御技術を確立することを目的としている。 本年度、我々は広範囲な抗プリオン化合物群に対して、正常型プリオン蛋白質(PrPC)との相互作用機構を調べ、抗プリオン化合物の分類を行った。そして、抗プリオン化合物には4種類の作用機構があることを明らかにした(Kamatari et al., Protein Sci. 22, 22, 2013)。本情報は構造変換に重要な揺らぎを同定するための基礎となる情報であり、さらにプリオン病治療薬の最適化の方向性を決める重要な情報となる。 プリオン構造変換を抑制するRNAアプタマーを発見し、この作用機構と細胞実験での有効性を証明した(Mashima et al., Nucleic Acids Res. 41, 1355, 2013)。 蛋白質-低分子化合物の結合を理論的に扱うための方法論の開発と実験データとの整合性の確認を行った(Ishikawa et al., Phys Chem Chem Phys. 15, 3646, 2013)。 これまでの高圧NMRを中心とした蛋白質の揺らぎに関しての研究を俯瞰して、蛋白質キャビティーと準安定状態の関係、その一般性、機能発現との関連、準安定状態を含んだ広範囲な構造情報取得の必要性についてまとめた(Akasaka et al., Arch. Biochem. Biophys, 531, 110, 2013; 赤坂一之, 高圧力の科学と技術, 23, 3-13, 2013; 鎌足雄司, ファルマシア, 48, 980, 2012)。
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