研究課題/領域番号 |
24570180
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
鎌足 雄司 岐阜大学, 生命科学総合研究支援センター, 助教 (70342772)
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研究分担者 |
桑田 一夫 岐阜大学, 連合創薬医療情報研究科, 教授 (00170142)
赤坂 一之 近畿大学, 先端技術総合研究所, 教授 (50025368)
織田 昌幸 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (20318231)
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キーワード | プリオン蛋白質 / プリオン病 / 抗プリオン化合物 / 創薬 / 揺らぎ / 高圧 / 準安定状態 |
研究概要 |
本研究は、プリオン構造変換を制御しうる広範囲な化合物群を用いてプリオン蛋白質(PrP)の構造変換に重要な揺らぎを同定すること、さらにPrP以外の蛋白質へも対象を広げることにより、揺らぎにより出現する準安定状態の存在と蛋白質機能発現の関係の解明、低分子化合物による蛋白質の揺らぎの制御技術を確立することを目的としている。 本年度、我々は免疫抑制剤の一種である低分子化合物タクロリムス(FK506)が、抗プリオン効果を持つことを発見した。またこの化合物は、直接正常型プリオン蛋白質(PrPC)と結合して抗プリオン効果を発揮するのではなく、オートファージを活性化することにより抗プリオン効果を発揮することを明らかにした(Nakagaki et al., FK506 reduces abnormal prion protein through the activation of autolysosomal degradation and prolongs survival in prion-infected mice. Autophagy. 9, 1386-1394 (2013))。 PrPCに対する抗体を作成する過程で、一般的に考えられている「一つの抗体は一つの抗原を認識する」という概念から外れる、「複数の抗原を特異的に認識する」興味深い抗体を発見した(論文投稿中)。これは、本研究のテーマである蛋白質の揺らぎが、異なる二つの準安定状態の存在を可能とし、この異なる二つの準安定状態が異なる二つの抗原に対する認識を可能にしていると考えられる。 これまでの蛋白質の揺らぎに関しての研究を俯瞰して、蛋白質内部のキャビティの存在が、蛋白質の揺らぎ、さらに、蛋白質の機能発現に密接に関連することを総説としてまとめている(論文執筆中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新規の抗プリオン化合物タクロリムスの発見とその作用機構の解明。 複数の抗原を特異的に認識する興味深い抗体の発見。
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今後の研究の推進方策 |
1. PrP 構造変換に重要な揺らぎの同定: 1.1 抗プリオン化合物のPrPCの安定性に対する寄与の同定: 抗プリオン化合物化合物の存在下、非存在下でPrPCの安定性の変化を調べる。1.2 抗プリオン化合物のPrPCの揺らぎに対する寄与の同定: 抗プリオン化合物の存在下、非存在下での揺らぎの変化を観測する。1.3 PrP構造変換に重要な揺らぎの同定: これまでに収集した低分子化合物とPrPCとの結合能、相互作用部位、安定性、ゆらぎの情報、及び抗プリオン活性との相関を調べる。そして、揺らぎと機能との間に相関があるか、あるとすれば、どういう部位のどういう時間スケールの揺らぎが、機能(構造変換)と関係が深いかを調べる。そして、機能制御に結びつく”低分子化合物添加による揺らぎの制御技術”として確立する。 2. 複数の抗原を特異的に認識する抗体の、抗原との複合体の構造、準安定状態の構造、揺らぎ、結合の熱力学的・速度論的パラメータを調べることにより、この抗体の抗原認識機構を明らかにする。 3. 準安定状態と機能発現の関係の解明: 異なる種のPrPとリゾチームを用いて準安定状態が保存されていることを確認し、準安定状態の存在と蛋白質機能発現の関係を実証していく。 4 低分子化合物添加による揺らぎの制御技術の確立: これまでに収集したPrPに関しての情報に加えて、その蛋白質の系についても並行して検討を行う。そして、これらの情報と他の研究者の研究結果を合わせ検討し、低分子化合物添加による揺らぎの制御技術の確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
H26年度物品費を確保するため。 H26年度物品費に使用予定。
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